開業準備の機運を削ぎかねない展開を乗り越えようと、市は「福井駅前電車通り北地区A街区市街地再開発組合」と連携して、工事現場の仮囲いへのデザイン装飾や見学会を実施した。
さらに、歩行者利便増進道路(通称・ほこみち)の導入に向けた社会実験やワークショップ、駅近くの足羽川河川敷でのアウトドア・イベント「ふくいまちキャン」を企画してきたという。
再開発組合は「多機能複合化により、また周辺街区や『ほこみち事業』とも連携しながら、福井の都市再生を牽引する核となることを目指している。工事の完成が目的ではなく、そこをスタートにした運営が長期的に持続することを重視して、中身の組み立てを進めている」と意義を語る。
コウノトリがモチーフ
越前たけふ駅(福井県越前市)は福井駅と対照的に、水田の中に建つ。長く「南越」(仮称)の名で呼ばれてきたが、2021年5月、この正式名称が決まった。
鉄道・運輸機構や市のサイトによると、駅舎のデザインは「羽ばたくコウノトリ」をイメージしている。かつて、日本から姿を消しつつあった野生のコウノトリがかろうじて、武生市(現・越前市)などに生息していた歴史にちなむという。
駅舎は市中心部に位置する北陸本線・武生駅から東へ3km弱、道なりでは5kmほど離れ、間に標高240mの村国山や九頭竜川の支流・日野川を挟む。タクシーなら片道約10分、千数百円で、往来にひと手間かかる。
延伸区間では唯一、在来線と接続しない単独駅だが、隣接して「道の駅越前たけふ」が新設される。整備新幹線沿線では、東北新幹線の七戸十和田駅(青森県七戸町)が単独駅、かつ「道の駅しちのへ」に隣接しており、比較的似た環境にある。
600mほど北に北陸自動車道・武生インターチェンジがあり、その近くにビジネスホテルやコンビニが並んではいるが、周辺施設、アクセス環境などの整備はゼロからのスタートとなる。市は駅一帯にスマートシティを形成する構想を掲げている。
武生駅には現在、大阪と北陸を結ぶ特急サンダーバード、名古屋と北陸を結ぶ特急しらさぎが1日約30往復停車している。これらの利用者が北陸新幹線にシフトした時、越前たけふ駅とその周辺には、どんな人の動きが生まれるのだろう。
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