北陸新幹線延伸「1年遅れ」で進む新駅と街の表情 小松から敦賀に巨大駅舎、地域の「顔」出そろう

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2022年6月下旬の訪問時は、市民に長年親しまれてきた昭和のビル群の大半が取り壊されていた。入れ替わりに、新幹線開業に合わせて27階建て・高さ120mの「コートヤード・バイ・マリオット福井」と28階建て・高さ100mのマンション、8階建ての複合商業施設などが建設される。

外資系ホテルなどが建設される福井駅前「三角地帯」の再開発地区(筆者撮影)

その西側のエリアではすでに、福井銀行の本店や北國銀行(本店・金沢市)の福井支店、「福井県繊協ビル」が新築されており、市街地の装いが一変しつつある。さらに、駅南東の「駅前南通り」地区ではもう1件、「食と健康のストリート」をコンセプトに再開発事業が進み、新幹線開業までに一部施設をオープンさせる計画という。

1997年の長野新幹線(現・北陸新幹線)開業以来、新幹線は地方都市の姿を変え続けてきた。しかし、中心市街地がこれほどの規模で改造される例はあまりない。

更新期を迎える建築物

福井市都市整備課によると、駅周辺は太平洋戦争末期の空襲や1948年の福井地震から70年余りが経過し、「戦災復興土地区画整理事業」に合わせて建設された建物の多くが更新時期を迎えていた。

再開発に伴い姿を消す「三角地帯」のビル群(筆者撮影)

再整備が進まなければ、都市の競争力強化や都市再生が実現しないだけではなく、都市活動における安全・安心が確保されずに、都市中心部の災害リスクが高まる。このため、将来的な経済的、社会的な損失の発生が懸念されていたという。

「新幹線開業を契機として、開業効果を受け止めるための都市のインフラの更新が官民で進んでおり、まち全体が将来に向かって大きく生まれかわる100年に一度のチャンスと捉えている」と担当者は強調する。

福井市の一連の動きは、強い逆風にも直面してきた。2020年に新型コロナウイルス感染症が世界中に広まって観光・交通ビジネスを直撃したうえ、市都市整備課によると、「三角地帯」の再開発事業も権利者調整や明け渡しの遅れが生じた。さらにアスベスト除去作業が加わったことなどにより、再開発事業の工期が約1年延びた。

他方、北陸新幹線は2020年秋、工事が1年半遅れ、事業費も予定を2880億円上回っている状況が判明した。曲折の末、年度末までに、開業を当初計画より1年遅らせるとともに事業費の増額を2658億円に抑えることが決まった。

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