温暖化が心配な人がたじろぐ、やはり過酷な現実 摂氏50℃の日常、世界各地で観測される異常気象
2020年10月に、当時の菅義偉首相は「2050年カーボンニュートラル宣言」を行っている。2050年までに温室効果ガス排出をゼロにしようという野心的な発言だ。しかし、この取り組みも家庭や個人の省エネ意識に訴えるものが多く、本質的には実行可能なのか不透明だ。
そもそも日本では、温室効果ガスの排出の50%を占めているのは「超大口130事業所」だというデータがある。超大口というのは、碧南火力発電所などの火力発電所、JFEスチール、日本製鉄などの大手製鉄所が、上位を独占している。こういう企業に対して、政府主導でCO2排出をゼロにさせなければ地球温暖化はストップできないはずだ。
日本の温室効果ガス排出量の内訳は次の通り(気候ネットワーク、2021「日本の大口排出源の温暖化ガス排出の実態 温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度による2017年度データ分析」より)。家庭や車などの存在がいかに小さいかがわかるはずだ。
●大口248事業所・18運輸事業所……9.9%
●その他大口15000事業所・500運輸事業所……12.9%
●中小企業・家庭・車など……27.1%
戦争はCO2削減にプラス、マイナス?
一方、地政学リスクの高まりでロシアからのLPGガス輸入がストップするなど、世界はエネルギー危機に見舞われている。石油やガスの代替エネルギーとして、大量のCO2を排出する石炭火力発電所が稼働されるなど、少なくとも一時的にはCO2削減にはブレーキがかかりそうだ。
とはいえ、火力発電所と並んでエネルギー効率の高い原発の再稼働が検討されており、原発のリスクなどを度外視すればCO2削減にはプラスの要因ともいえる。かつての冷戦時代も、経済成長にブレーキがかかったために、温室化効果ガスの排出はセーブされたと言われている。戦争のおかげ、というよりも、経済成長至上主義を改めない限り、人類が気候変動に勝つ方法は少ないのかもしれない。
結論を言えば、われわれ先進国に住む人間が快適な暮らしを続ける限り、地球温暖化を止めることはできない。アメリカ式の3カ月ごとに企業の成長度合いを開示させる成長至上主義は、地球温暖化にとっては最大の敵なのかもしれない。経済成長をどこかで止めなければ、地球や人類にとって明るい未来は描きにくい。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら