温暖化が心配な人がたじろぐ、やはり過酷な現実 摂氏50℃の日常、世界各地で観測される異常気象

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こうした異常気象は政治家にも大きなプレッシャーを与えるはずだが、ドナルド・トランプ前アメリカ大統領のように地球温暖化を軽く見る政治家も少なくない。ロシアのプーチン大統領も地球温暖化を真剣に考えているとは到底思えない。ブラジルのボルソナーロ大統領も、地球の肺といわれるアマゾンの緑地を守ろうという意識はなさそうだ。こうした政治指導者には、2050年や2100年、まして2300年といったシミュレーションは説得力のない話になってしまう。

そんな状況の中で、最近指摘され始めたのは地球温暖化によって食糧生産が被害を受け、全地球の人口の食糧を賄えなくなるのではないか、という懸念だ。地球の人口が80億人を超え、まもなくインドが中国を超えて世界最大の人口になると見られている中、中国やインドが、食料を自前で調達できるのかと言えば、それはやや疑問と言って良いだろう。インドは、小麦の生産ランキングで世界第1位の中国に次いで第2位だが、今年の5月にはウクライナ情勢や自国の気候変動などを理由に、小麦の輸出を禁止している。

個人が節電、省エネしてもCO2は削減できない?

食糧不足問題は、すでにアフリカや中近東などでは現実のものとなっているが、ロシアによるウクライナ侵攻によって、いまある危機に様変わりしてしまった。IPCCのシナリオでは、2050年までに800万~8000万人が苦しむことになるとしているものの、この数字には疑問を持たざるをえない。

そもそも世界の飢餓人口は、国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2020年のデータで7億2000万~8億1100万人と推計されている。前年の2019年に比べて1億1800万人と急増しており、2030年には6億6000万人が飢餓に直面していると予測している。

中国やインド、ロシアは、これまで二酸化炭素を大量に排出してきたG7など先進国の責任を追及しており、さらに世界中の政治家が気候変動対策に邁進しない理由には、エネルギー関連業界や代替エネルギーを導入するだけの資金がない企業や業界の反対があるからだ。その結果として、IPCC報告書のように客観性を重んじるあまり、CO2削減へのメッセージ性が薄らいでしまっている。

そもそも個人レベルの節電や温暖化対策で、ほんとうに地球温高化をストップできるのか。そのあたりの検証が不十分だ。個人レベルではなく、政治家がリーダーシップを発揮して大量のCO2排出企業に改善命令を出せるような状況にならないと、いまや地球温暖化対策は機能しないのではないか……。

次ページ130の事業所で日本の半分のCO2が排出されている?
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