温暖化が心配な人がたじろぐ、やはり過酷な現実 摂氏50℃の日常、世界各地で観測される異常気象

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2021年11月にイギリスで開催された「COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)」では、「世界の気温上昇を1.5℃以内に抑える努力をする」と確認している。各国とも、地球温暖化対策=CO2削減に取り組むと約束したわけだが、現実には今後20年で「1.5℃」の気温上昇は避けられそうもない。しかも、「温室効果ガスを2030年に2010年比45%削減」というCOP26=グラスゴー気候合意の目標を守れる国が本当にあるのか、かなり疑問だ。2030年といえば、あと8年しか時間は残されていない。

「温室効果ガスを2030年に2010年比45%削減」とは、日本を含む先進国が次の改革を実行する必要がある。今の状況では、実現可能とは到底思えない(IEA=国際エネルギー機関が発表したロードマップより)。

●2030年までにCO2の回収や貯留ができない石炭火力発電所を段階的に廃止する

●2035年までに電力部門のCO2排出を実質ゼロにする

●2035年までに内燃機関自動車の新規販売を終了する

温暖化は急進行

さらに問題なのは、IPCC報告書をはるかに上回る速度で地球温暖化が進みつつあることだ。気候変動の象徴ともいわれる「平均海面上昇」は2300年の時点で「低いシナリオ」で「0.5~3.0m」、「非常に高いシナリオ」では「2~7m」とされている。2300年の話が2022年に住んでいるわれわれに届くのかといえば、答えは「ノー」だろう。IPCCの報告書がいまひとつピンと来ない理由の1つになっているとも言える。

実際に、世界は頻繁に高温、多雨、干ばつといった異常気象に襲われ続けており、すでに水害により移住を余儀なくされた住民は、2020年でも約2800万人に達し、西太平洋では8つの島が水没したと言われている(日本経済新聞朝刊、2022年3月1日)。国連大学環境・人間の安全保障研究所(UNU-EHS)は、「2050年には世界で20億人が洪水の危機にさらされる」と、18年も前の2004年6月には警告している。

また、同報告書ではシナリオの③や④の2℃から3℃台の気温上昇で、最大12兆7000億ドルの資産が洪水によって被害を受けるとシミュレーションしている。さらに最大30億人が慢性的な水不足を経験すると指摘。もっとも、2100年の「気温シナリオ」にどれだけの説得力があるのかも不透明だ。

そもそもこの報告書そのものが「現実を過小評価しているのではないか」「現実をよりシビアに表現することを避けているのではないか」という指摘まで出ている。IPCCは、気候変動について最新の科学的知見を評価する政府間組織だが、地球温暖化について今回はじめて「疑う余地がない」と断定したが、そこに至るまでに相当の時間を要している。

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