アメリカ社会に地殻変動を起こす最高裁と保守州 リベラル化から保守化へ長期的な潮流が変わる
リベラルな方向に進む社会に対し、最高裁が保守的な思想で社会変化を阻止する動きは過去にもあった。1857年、ドレッド・スコット対サンフォード判決で奴隷制をめぐり社会は二分。北部は奴隷制度に反対し判決結果を批判した一方、奴隷制度維持を望む南部などは判決結果を称賛。奴隷制の問題は、南北戦争終結後の1865年に憲法改正によって奴隷制を禁じることでようやく決着した。
全国民の人権拡大の潮流を止めた最高裁
アメリカはこれまでの約半世紀、リベラル派の声を反映し、連邦レベルで全国民の権利を拡大する方向にあった。しかし、現在、その時代の潮流に逆らう地殻変動が起きている。地殻変動をもたらしている最高裁判決とレッドステートに対し、バイデン政権と民主党多数派の議会は効果的な対抗策を打ち出すことができていない。
最高裁判決後、バイデン大統領は人工妊娠中絶に関わる大統領令を発行するも、政策への影響は限定的だ。また民主党が、立法措置により最高裁判事の増員や任期制導入、最高裁判事の弾劾などを行って最高裁の保守色を変えるようとすることは極めて難しい。
したがって将来の選挙で民主党圧勝の「ブルーウェーブ」が到来するか、あるいは数十年後となる可能性さえある判事交代による最高裁の左傾化が起こるまで、リベラル派は為す術もない。国民の権利を拡大していくようなリベラル化の軌道に、アメリカ全体が再び戻るのは遠い将来のことになるかもしれない。
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