超スター軍団PSG日本ツアー実現の絶大な効果 メッシ・エムバペ・ネイマールの日本凱旋の思惑

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「PSGは日本にアカデミーの開校を計画しています。今年10月以降に都内で最初のスクールを立ち上げ、徐々に展開し、独自のメソッドを伝えていくことになっています。そのプロジェクトを通して日本の若い世代との結びつきをさらに強めたいというのが、彼らの強い願いです。

目下、PSGは『ニュー・ジェネレーションクラブ』というキーワードを掲げていますが、レアル・マドリードでバルセロナなど他のビッグクラブとは異なるポジションを日本で築きたいという考えがある。日本ツアーでその布石を打てれば理想的だと思います」(橋本氏)

確かに興行としては大成功だし、ビジネス的側面から見ても、今回の日本ツアーは意味あるものだったと見ていい。ただ、PSGの現場サイドは必ずしも万々歳とは言い切れないところがあるようだ。

23日の浦和戦と25日の大阪戦にまずは注目

彼らは新シーズン最初の公式戦「トロフェ・デ・シャンピオン」を7月31日に控えており、日本遠征後に開催地・イスラエルまで移動しなければならない。しかも、フランスリーグ1部開幕は8月6日に迫っている。9月からはUEFAチャンピオンズリーグ・グループステージもスタートするため、超過密日程を強いられることになる。日本でいい準備ができなければ、今後への影響は甚大なのである。

今月上旬に就任したばかりのクリストフ・ガルティエ監督もこんな話をしていた。

「当初は日本からイスラエルに直接移動しようと考えたが、高温多湿の日本では、どうしても夜遅くに練習せざるを得なくなる。となるとフィジカルコンディションの調整が難しくなる。そこで、ガンバ大阪戦翌日にいったんフランスに帰国し、イスラエル入りすることにした。そうすれば、時差も克服でき、中身の充実した練習もできると思います」

つまり、過酷な気象条件でイベント続きの日本では十分なトレーニングができない恐れがある。そんな懸念を新指揮官は抱いているのだ。現に22日に予定されていたPSGアカデミー開校セレモニーが疲労蓄積と国内のコロナ陽性者急増によって前夜にキャンセルとなっている。不安は増すばかりなのだ。

加えて言うと、彼は3バックの新布陣にもチャレンジしていて、戦術浸透もスムーズにいかなくなるリスクもある。ビジネス的なメリットが大きかったとしても、肝心の現場が混乱してしまうようでは本末転倒だ。ガルティエ監督は難しい舵取りを迫られることになりそうだ。

欧州名門クラブとスター選手の凱旋で盛り上がる日本のファンや関係者とは対照的に、実際に遠い極東の国までやってくるチーム側は手放しで喜べない部分もある様子。そういった懸念材料を払拭すべく、PSGにはここから確実にギアを上げていってもらわなければならない。

まずは直近23日の浦和戦だ。この一戦には、カタールW杯で日本と対戦するコスタリカの守護神、ケイラー・ナバスも先発する見通し。4カ月後に迫った大舞台を視野に入れつつ、彼らの一挙手一投足に注目したい。

元川 悦子 サッカージャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事