「トランプ復権」ウクライナ戦争で露呈した悪夢 懸念すべき米中ロ「専制トリオ」時代の到来

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第3に、側近たちが逆らわないどころか、プーチンの考えを忖度して動くことで、ますます正確な事態を掌握できなくなったことである。トップが満足する情報のみを上げ、都合の悪い情報をあえて報告しないのは、どのような政治体制でも起こりうることだが、専制国家の場合は極端である。情報の誇張や操作も起こりうる。

最大の問題は修正が難しいこと

こうした傾向は、中国でも少なからず起きてきた。ゼロコロナ政策も専制国家の弱点を示していると言えないか。多くの国々がコロナとの共存に動く中、同政策にこだわるあまり、都市封鎖を強行し、経済に大きな打撃を与えてしまった。指導者が一度決めたら変えることはほぼ不可能である。ミスを認めることはトップと指導層の権威の低下につながりかねないからだ。

これまで、専制国家はトップダウンで迅速に政策を遂行できるので、議論に時間をかけ対応が遅れがちになる民主国家より優れていると主張してきた。民主国家の中にもそうした議論に同調する向きは少なくない。しかし、プーチンの侵略戦争やコロナ禍で、逆に弱点を露呈したと言えないだろうか。専制国家の最大の問題は、政策の変更や修正が難しいことである。

この点は、車の運転に例えるとわかりやすい。専制国家はアクセルをふかすのが容易で加速性に優れているものの、車線変更は簡単ではなく、ブレーキは掛けにくい。逆に、民主国家は加速には時間がかかるが、途中の車線変更は容易で、ブレーキも掛けやすい。要は、専制国家は暴走する危険性を伴うということである。

では、専制国家の代表と言えるロシアや中国と、民主主義国家のリーダーとされるアメリカとの確執で、アメリカは優位に立ち、民主主義陣営に軍配が上がるのだろうか。

残念ながら、そうは言いきれないし、むしろ、そうならない可能性がかなりあると判断せざるをえない。何より、アメリカの政治の先行きに重大な懸念が残るからだ。

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