ところで、冒頭で日本はいつまでも「さん付け」と書いたが、そもそもいつから「さん」付けで人を呼ぶようになったのだろうか?
時代劇で、江戸時代の話や鎌倉時代の話、戦国時代の話を見ていて、「頼朝さん!」とか「信玄さん!」とか言っている人はいないが、幕末ドラマで「西郷さん」とか「坂本さん」とかは違和感なく聞いたことがあろう。
一説には江戸の幕末には敬称である「さま」が、よりくだけた親しみのこもった、同志意識を表す「さん」として使われるようになったという。
「さん付けカルチャー」にも、日本の平等志向が現れている
たしかに日本では、かなり「偉い人」に対しても、会社の後輩に対しても、お客さんに対しても、平等に「さん」で呼んでいるのは、特筆すべきことだ。
これに対し韓国では、「社長様」「理事様」「部長様」「記者様」「作家様」と、相手を「役職」や「立場」で呼ぶことが多い。
日本語の「さん」に近いのは、強いて言えば「氏」なのだが、大統領に対して「ユンソギョル氏」などと呼べば失礼に当たるし、お客さんや上司を「氏」で呼んでも、失礼な響きになる。韓国では「身内の人間関係」は近いのだが、「他人との人間関係」は逆に日本に比べて遠いのだ。
日本語では、岸田総理も「岸田さん」と普通に呼ばれるし、天皇家以外は「さん付け」で老若男女、社会的立場の上下を問うことなく、カバーすることができる。
この「さん付けカルチャー」にも、日本の平等志向が表れている。そして相手を「役職」や「立場」で呼ぶ韓国カルチャーには、「相手が何をやっている人なのかを重視する、儒教カルチャー」の名残りが垣間見えるのである。
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