「頭の悪い人だから独学で身に付かない」の勘違い 読んでもわからない教本だったら替えてしまおう

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多くの人には、完璧主義者でないと独学には向いていないというイメージがあるかもしれませんが、実際はむしろ逆です。独学を続けるには、少しいい加減なくらいの気持ちのほうがうまくいきます。テーマや目標もあまり無理して明確にする必要はありません。すでに「これをやりたい」ということが決まっている資格の勉強なら別ですが、そうでなければ、無理して決めてしまうとかえって自分の可能性を縛ってしまうことになります。

実際にはじめてみれば、いろいろな道が見えてくる

これは卒業論文や修士論文を書く際にもよく起きることです。最初にテーマを一応決めさせるのですが、それが途中でかなり変わっていくことが珍しくありません。実際にやってみると、思った通りにはいかないので、だんだんテーマが変わっていき、できあがりはまったく違ってくるものなのです。

そもそも論文を書くというのは、それまで誰も書いたことがないことをやるので、やってみないことには、先にどんな道が待っているかもわかりません。行ってみたらもしかすると、行き止まりかもしれません。

ですから、最初にテーマを決めてとりあえず走り出しはするのですが、道がなかったら臨機応変にすぐ変えていくことが大切です。最初に立てたテーマにこだわりすぎると、たいていうまくいきません。「絶対に最初決めた場所に行くんだ」といって無理に進もうとすると、山を切り崩さないと前に進めないような状況に陥ってしまいます。

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論文執筆に限らず、一般的な独学もまったく同じことです。実際にはじめてみれば、だんだんと思いもかけなかったいろいろな道が見えてくることでしょう。それに応じて臨機応変に道を選びながら勉強するというのでかまわないのです。いや、むしろそうでないとうまくいかないと思います。

そう考えると、完璧主義でないほうがむしろ独学には向いていることがおわかりでしょう。完璧主義だと初志貫徹しようとして壁に当たるか、やむなく方針をころころ変えて自責の念にかられるかのどちらかにならざるをえないからです。

ですから、どうぞ気楽な気持ちで独学に取り組んでいただければと思うのです。

前回:本を読み「ものにする人」と身につかない人の大差(5月20日配信)

柳川 範之 東京大学経済学部教授

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やながわ のりゆき / Noriyuki Yanagawa

1963年生まれ。東京大学経済学部教授。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士(東京大学)。現在は契約理論や金融関連の研究を行うかたわら、自身の体験をもとに、おもに若い人たちに向けて学問の面白さを伝えている。主な著書に『法と企業行動の経済分析』(第50回日経・経済図書文化賞受賞、日本経済新聞社)、『契約と組織の経済学』(東洋経済新報社)など。

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