テレビの「選挙特番」を覆った“安倍氏死去"の影 衝撃事件を受け異例のスタイルを余儀なくされた
どの局のMC陣も、通常なら「ハイテンション」になりがちなところを控えめにせざるをえない。
用意するVTRも、バラエティ色の強いものは見送らざるを得ないのだ。
これは、「視聴者への配慮」や「自民党への忖度」ではなく、制作者側の「矜持」によるものが大きいだろう。
やはり今回は「選挙だからといってハシャいでいる場合ではない」と考えるのだ。
結局、各局ともに選挙特番の中で「安倍元首相が銃撃され死去」のニュースを改めて伝えざるをえなかった。
「大勝利」だった自民党も、岸田首相をはじめ、幹部や当選候補者も一様に笑顔はなく沈痛な面持ちだった。
野党も勝っても負けても淡々と言葉を述べる様相
野党側も、議席を獲得しても、あるいは敗戦しても粛々・淡々と言葉を述べる様相だった(一部、ネットを中心に選挙戦を展開し議席を獲得した候補たちは通常スタイルだったが)。
そもそも今回の参院選は各種世論調査でも「与党有利」という予想がされていた。
「物価高」などが争点とされていたが、政策論争で盛り上がる雰囲気にいまひとつ欠けたまま投票日が近づいていた。
そんな中で事件は起きた。
ただ、事件を受けて自民党へ投票をすることにした有権者も、一定数はいたようだが、選挙の趨勢を左右したほどでもなかったようである。
「もともと優勢だった自民・公明に、さらに上積み票が入った」という形だろう。
そのような結果も、視聴者にはある程度〝予測〟ができていたと思われる。
テレビ局としては、勝敗がある程度予測できていた選挙なので、本来ならば当落を伝える以外の部分、企画VTRや中継による丁々発止のやり取りで「差別化」を図りたいのだが、そこを〝事件の影〟が覆ってしまった。
舌鋒の鋭さで知られる橋下徹元大阪府知事を起用したフジテレビは各局の中で視聴率がいちばん低かった。
猪瀬直樹氏や山本太郎氏との〝生論戦〟は「舌鋒エンターテインメント」としては興味深かったが、視聴者はついてこなかったようである。
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