テレビの「選挙特番」を覆った“安倍氏死去"の影 衝撃事件を受け異例のスタイルを余儀なくされた

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

私が携わる情報報道番組でも、通常の内容を変更して、1時間の放送枠をすべて使って「安倍元首相」のニュースを伝えた。

つまり参院選投票日の2日前と前日は、テレビ局にとって「選挙どころではなかった」。

視聴者も同様だっただろう。

安倍元首相の在任期間は、戦前を含めてこれまで最長の8年8か月である。 これだけ長きにわたって総理大臣を務めた人物が凶弾に倒れたことは、大きな衝撃となった。

事件翌日の9日は、選挙戦の最終日でもあった。

この日、凶行の現場となった奈良県の大和西大寺駅には「献花」をする人たちによる長い行列ができた。

“普通の選挙特番”ではなくなってしまった

生前の安倍元首相による政治・政策に、必ずしも賛意を持たなかった人も献花には訪れていた。

そしてその模様も、やはりテレビ各局はニュースとして伝えていた。

一方で、「選挙特番」の担当者たちも作業に追われることとなった。

選挙特番では開票速報とともに「事前取材」のVTRも多く用意をしている。

「注目の選挙区」や「有名候補の奮闘ぶり」、毀誉褒貶あれど、いまだに注目を集める「小泉進次郎氏に密着」など、〝普段の選挙特番〟ならば視聴者を飽きさせないために工夫を凝らしたVTRを作る。

奮闘からの当選、あるいは落選というドラマは、ある種の「当落エンターテインメント」として選挙特番には欠かせないものである。

だが今回は、〝普段の選挙特番〟ではなくなってしまったのだ。

衝撃的なニュースを受けて、選挙特番も〝トーン〟を変えざるをえなかった。

「与党が勝つのか?」「岸田政権への審判は?」「野党の勢力争いは?」これらを伝え、万歳三唱を伝え、敗戦の弁を取材し、中継で与野党の幹部に切り込むというのが、選挙特番の定番スタイルである。

しかし今回は、「安倍元首相」を避けて通ることは不可能である。

ここに〝事件の影〟が重くのしかかったのだ。

次ページどの局もMC陣のテンションは控えめに
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事