伴侶喪失を癒せない増加する高齢単身世帯の孤独 人生100年の2040年、高齢世帯の4割が単身に

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大切な人との別れはしっかり悲しみ、泣くことが重要(写真:Luce/PIXTA)

7月9日午後1時半すぎ、閑静な住宅街であるはずの東京・渋谷区の一角は、普段とは異なる空気に包まれた。数十人の警察官が厳戒態勢を敷き、海外メディアも含め100人超の報道陣が待っていたのは1台の霊柩車。自民党の高市早苗政調会長、福田達夫総務会長らの迎えに助手席の昭恵夫人は静かに頭を下げ、主の安倍晋三元首相は無言の帰宅となった。

広間で憔悴した様子の昭恵夫人は立ち尽くし、安倍氏が率いた自民党最大派閥「清和政策研究会」の西村康稔事務総長が寄り添う。94歳の母親の洋子氏は、衝撃的な愛息の最期にも気丈に振る舞う・・・・・・。

配偶者の死はもっとも大きい心の負担

安倍元首相の突然の訃報を受けて、「もし自分が伴侶など大切な人を失ったら」とわが身を振り返った方もいるかもしれない。心理カウンセラーの立場から言えば、ライフイベントの中で「配偶者の死」はもっとも大きい心の負担になる。

アメリカの心理学者であるトーマス・ホームズ氏と内科医のリチャード・レイ氏がストレスを点数化した「社会的再適応評価尺度」によれば、結婚を50とした場合に「配偶者の死」は100、「近親者の死」は63となっている。海外では、配偶者との死別後に脳梗塞や心筋梗塞といった心血管疾患に加え、うつ病などの発症率が高まるとの研究報告もある。

大切な人を亡くした時に生じる深い悲しみを「グリーフ(悲嘆)」というが、これ自体は誰にでも起きる自然な感情の変化である。一般的には、最初のうちは死を現実のものと受け入れることができない「ショックと否認」の状態を迎える。感情が麻痺し、悲しみさえもわかず、涙が出てこないケースもみられる。この状態の長さは人によって異なるものの、数カ月から数年に及ぶ。

親しい人との死別は最大の「喪失体験」であり、心に大きな負担を与える。悲嘆の身体的症状として脱力、呼吸障害、疲労感といったものが現れ、心的症状には罪責感や抑うつ、敵意反応などがみられる。

アメリカ心理学者のウィリアム・ウォーデン氏は、悲嘆のプロセスとして4つの課題に向き合う必要があるとし、①喪失の現実を受容すること、②悲嘆の苦痛に向き合うこと、③故人のいない新しい環境に適応すること、④故人の位置づけを心の中で再配置し、生活すること――を挙げている。

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