伴侶喪失を癒せない増加する高齢単身世帯の孤独 人生100年の2040年、高齢世帯の4割が単身に

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映画『老後の資金がありません!』は、夫を亡くした妻が長男夫婦の家に迎えられ、様々なトラブルを経ながらも幸せに暮らす模様を描いていたが、単身の高齢者世帯は増加し続けており、2015年の時点でも男性は約192万人、女性は約400万人に上っている。

内閣官房孤独・孤立対策担当室が今年4月に公表した「人々のつながりに関する基礎調査」の結果によると、全世代の3人に1人が孤独を感じており、婚姻状況は未婚が9.6%でトップ。次いで離別8.1%、死別3.4%と続く。

また、孤独と感じる前に経験した出来事は「1人暮らし」が22.5%でもっとも高く、2位は「家族との死別」(20.7%)で、大切な伴侶を失い1人暮らしとなった人の孤独感が高いことがうかがえる。1人暮らしの高齢者を調査した第一生命経済研究所のレポート(2017年)では、「孤独死するかもしれないこと」を不安にあげる男性は20.2%、女性は13.4%に上る。

人生100年時代の心のサポートが課題

日本人の平均寿命(2021年7月発表)は男性81.64歳、女性87.74歳で、いずれも過去最長になった。女性は世界2位、男性は3位という長寿大国である。厚生労働省は、2040年時点で65歳を迎える男性の4割は90歳まで、女性の2割は100歳まで生存すると推計しており、まさに「人生100年時代」の到来を意味する。ただ、長寿化とともに1人暮らしの高齢者が増加していけば、大切な人を失った時の心身のケアやサポートが大きな課題になるのは間違いない。

出逢いと別れはつきものとはいえ、死別があまりに衝撃的で、その存在が近ければ近いほど、溢れる悲しみとショックから立ち直ることは容易ではない。心身ともに大きなダメージとなる喪失体験をきちんと乗り越えなければ、うつ病や心血管疾患などの危険性も生じる。

人によって死別後の悲嘆から立ち直る過程は順番通りとはいかないが、周囲が留意すべきことは、遺族が悲しまないよう不用意に励ましたり、何かを聞き出したりしようとせず、不安やショックを受け止めて分かち合うことにある。遺族は辛い時には信頼する人にサポートを求め、支えてもらうことも大事だろう。

繰り返しになるが、大切な人を失った時に生じる悲しみは誰にでも起きる自然な感情である。そして、その際には「しっかりと悲しむこと」が大切になる。他者と比べたり、焦ったりする必要はなく、何かで一時的に気を紛らわせても悲しみが消えることはない。周りの人は、こうした状態を理解したうえで、遺族が感情を吐き出すことのできる環境を整えることが重要となる。

佐藤 健太 マネーセージCMO、ファイナンシャルプランナー

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さとう けんた / Kenta Sato

ライフプランのFP相談サービス『マネーセージ』執行役員。心理カウンセラー・教育アナリスト。社会問題から政治・経済まで幅広いテーマでソーシャルリスニングも用いた分析を行い、各種コンサルティングも担う。様々なメディアでコラムニストとしても活躍している。

 

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