伴侶喪失を癒せない増加する高齢単身世帯の孤独 人生100年の2040年、高齢世帯の4割が単身に
大切な人との別れから回復するポイントは、悲嘆のプロセス(グリーフワーク)にあるといわれる。中でも大事なのは「しっかりと悲しみ、泣く」ことである。この状態変化は多くの人が歩むことになるが、悲しむことを軽視して「いつまでも、そんなに泣いていない方がよい」などと周囲が促したり、遺族が無理に明るく振る舞っていたりすれば、感情と行動にズレが生まれ、心身の不調が長引いてしまうことがある。
深い悲しみを抱えて周りのサポートやケアもなければ、「病的な悲嘆」に陥るケースもある。少しずつでも遺族が悲しみを受け止められるよう周りが支えることが重要なのだ。
ドイツの哲学者であるアルフォンス・デーケン氏は、悲嘆のプロセスを精神的打撃・麻痺状態から否認、パニック、怒り、罪責感など12段階に分類し、最終段階においては新しいアイデンティティーを獲得するとした。
その中の「孤独感と抑うつ」は通夜や告別式などが一通り終わり、その途端に寂しさがあふれてくる段階を指す。頼りになる人がそばにいれば話を聞いてもらったり、気持ちを分かち合ってもらったりすることもできるが、孤独な環境であれば言葉には言い表せない辛さを一人で抱えてしまうことになる。
単身の高齢男性、会話2週間に1回以下が15%
高齢化が進む日本で懸念されるのは、1人暮らしの高齢世帯が増加している点にある。国立社会保障・人口問題研究所が2019年4月に発表した将来推計によると、2040年には65歳以上の高齢世帯に占める1人暮らしの割合が4割に上るという。都市部での増加が目立ち、東京都では2040年に116万世帯に達する見通しだ。全高齢世帯に占める比率は45.8%と全国最大となる。
1人暮らしになれば、身近の頼れる人が減り、会話の頻度も減少する傾向にある。高齢世帯の状況を調べている同研究所の「生活と支え合いに関する調査」(2017年)によると、高齢者が子供、孫と暮らす2世代世帯、3世代世帯では「毎日会話する」が約97%と高い一方で、子供とは別に暮らす1人暮らしの高齢者は会話が少ないことがわかる。毎日会話する単独高齢男性世帯は49.5%、単独高齢女性世帯は61.1%で、会話頻度が「2週間に1回以下」との回答も男性14.8%、女性5.4%に上っている。
また、「日頃のちょっとした手助け」で頼れる人はいないとの回答は単独高齢の男性世帯で3割超に達し、女性世帯の1割に比べて高い。子供以外で「介護や看病で頼れる人」が不在との回答は男性世帯で58.2%、女性世帯でも45.1%に達している。
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