英「ジョンソン首相」身内の裏切り招いた問題思考 相次ぐスキャンダルに閣僚等約60人が辞任宣言

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2020年1月末の正式離脱後、新型コロナの感染が広がり、イギリスは約18万人の死者を出す大きな被害を被った。首相自身も感染症にかかり、一時はその命が危ぶまれた。しかし、ワクチン開発に巨額投資をした効果が出て、急速に接種が進んでいくと、ジョンソン政権は国民から大きな信頼を得た。ウクライナ戦争ではいち早く現地入りし、ウクライナのゼレンスキー大統領を激励するとともに武器支援にもヨーロッパの中で最も積極的な役割を果たした。

しかし、政治的に命取りとなったのが、数々のスキャンダルで首相が行った苦し紛れの言い訳だ。品格や倫理観に欠けた、信頼できない人物であることが如実になった。

例えば、先週明らかになったピンチャー院内副幹事長による痴漢行為事件。首相は当初は「知らなかった」と否定していたが、実は3年前に同様の行為について報告を受けていた。

この点を聞かれると、「忘れていた」という。首相が外相だった時に、ピンチャー氏は外務次官だった。院内副幹事長に任命したのはジョンソン氏だ。首相は「要職を与えたのは間違いだった」と謝罪に追い込まれた。

ロックダウン中のパーティーに非難集中

昨年来、連続して報道されてきたのが、コロナ対策でロックダウン規制が敷かれていた時、自分は官邸で誕生会や忘年会に出席していたという、いわゆる「パーティー疑惑」だ。「パーティーだとは知らなかった。仕事のイベントだ」と再三、議会で説明してきたが、ロンドン警視庁の捜査が入り、ロックダウン規制の違反で罰金を払う羽目になった。

ロックダウンのために、病院や高齢者施設にいる自分の家族に会えない人々がたくさんいた。「規制を課した当の本人が規制やぶりをするなんて」。多くの国民が首相を非難した。

昨年、首相と親しいパターソン保守党議員が議員という身分を使って企業のためにロビー活動を行い利益を得ていたことが発覚し、議会基準委員会は「関連企業に便宜供与したロビー活動は議会規則違反にあたる」と報告した。パターソン氏は辞職するだろうと多くの人が考えた。しかし、ジョンソン首相は報告書の判断を認めず、委員会の手順そのものがおかしいとして、見直しを決定した。

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