そごう・西武売却、「優先交渉権付与」でも残る不安 フォートレスが金額で頭ひとつ抜け出したか

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「創業家出身者として祖業であるイトーヨーカ堂の行方には関心があっても、そごう・西武に関しては思い入れがない。もっとも高く売れればそれでいいと考えたのではないか」(セブン&アイ幹部)

セブン&アイの井阪隆一社長にしても「そごう・西武は鈴木(敏文元会長)案件で、セブン‐イレブン出身の井阪さんは興味がない。グループ内で足を引っ張る存在でもあり、鈴木色を排除するためにも、高ければどこでもいいと思っていたのでは」(同)と見る向きもある。

再建の実効性をめぐり詰めの議論へ

確かに欧米のM&A界では、行き過ぎた企業買収防衛策や経営判断を排除するため、買収価格の最大化を図らなければならない「レブロン基準」というルールが一般的。日本ではなじみが薄いものだが、要は価格が少しでも高い候補者に売却しなければならないというもので、そのルールに則ったとの見方もできる。

ただ、フォートレスの提案内容は「店舗にヨドバシカメラを入れるというだけで、具体的な再建策はない」(セブン&アイ幹部)と見られている。提示価格に見合った再建を果たせるのかは不透明だ。仮に再建が思うように進まなかった場合に店舗を売却しようにも、池袋や渋谷などのそごう・西武の店舗は権利関係が複雑で容易ではない。

「とりあえず、優先交渉権の付与が濃厚となったことで一歩踏み出したが、再建の実効性をめぐって詰めの議論が交わされることになる。最終決定に至るまでには、さらなる時間を要するのではないか」(そごう・西武幹部)。売却に向けて一歩ステップは進んだものの、そんな不安が渦巻いている。

田島 靖久 東洋経済 記者

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たじま やすひさ / Yasuhisa Tajima

週刊東洋経済副編集長。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件取材を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2020年11月に東洋経済新報社に入社、週刊東洋経済副編集長、報道部長を経て23年4月から現職。

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