日本初「がん治療支援ホテル」に渦巻く期待と不安 三井不動産が千葉で開発、外来診療も受け付け

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医療サービスを受けるために外国を訪問する「医療ツーリズム」の需要は拡大している。コロナの影響が広がる前の2019年、日本における医療滞在ビザの発給数は1653件と、5年間で約1.7倍にまで増えた。

長期滞在者向けの客室には洗濯機やキッチンもある。東病院の利用者向けの割引プランも用意されている(記者撮影)

外国人患者の来院も拡大が見込まれる中、こうした医療を支援するホテルの需要はますます高まりそうだ。

日本では、病院と連携したホテルが同じ敷地内で運営されるケースはけっして多くない。がん治療に特化した病院で、ホテル内に治療室を持つのは柏の葉パークサイドが国内初とみられる。

【2022年7月3日13時04分追記】初出時の一部表記を上記のように修正いたします。

だが、欧米の主要病院でこうしたケースは珍しくないという。例えば、アメリカのテキサス州にある病院「MDアンダーソン」では、家族が滞在するホテルが隣接している。

「病院とホテルが廊下でつながっており、衝撃を受けた。日本でも同じような取り組みがしたいと考えていたところ、『柏の葉スマートシティ』の開発に参画した三井不動産との協議が進んだ」(国立がん研究センター東病院の大津敦院長)

注目が高まる“病院不動産”

「柏の葉スマートシティ」は、三井不動産にとって旗艦プロジェクトだ。つくばエクスプレスが開通した翌年の2006年から、柏の葉キャンパス駅前での都市開発を本格化。商業施設「ららぽーと柏の葉」や、計11棟からなる分譲マンション群(総戸数1857戸)などを開発してきた。

一部の客室のトイレは、車椅子が回転できる広さを確保している(記者撮影)

現在も、ライフサイエンスにまつわる研究拠点やベンチャー向けオフィスの開発を進めている。

三井不動産で柏の葉の街づくりを統括する山下和則執行役員は「先進的な大学や病院がエリア内にある柏の葉を、ライフサイエンスの集積地にしたい。住む人々が抱える健康の課題を解消し、新たなイノベーションも生まれるような街を目指す」と意気込む。

オフィスや住宅など、従来型アセットをめぐるデベロッパー間の競争は激化している。そうした中、需要拡大を見込んで新たに医療機関や介護施設などの“病院不動産”の開発に乗り出すデベロッパーも増えている。三井不動産からすれば、柏の葉のプロジェクトを通じて医療関連のノウハウを蓄積できれば、競合との差別化にもつながる。

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