日本初「がん治療支援ホテル」に渦巻く期待と不安 三井不動産が千葉で開発、外来診療も受け付け
デベロッパーにとって収益柱となる再開発案件を自治体から獲得するうえでも、柏の葉のホテルのような物件の開発実績は重要な意味を持つ。あるデベロッパー幹部は「土地区画整理事業者の選定の際に、地域住民の健康寿命が延びるような“ウェルネス”に寄与する取り組みがあると、自治体は高く評価してくれる」と話す。
一方で病院不動産の開発・運営に当たっては、収益とコストのバランスが課題となりそうだ。三井不動産の内川孝広・ホテル・リゾート事業一部長も「(柏の葉のホテルは)通常のホテルより原価率が高い」と認める。
柏の葉パークサイドでは、専用車両による東病院への送迎や、患者の食事を管理するITツールなどのサービスを利用者に提供している。さらに常駐する介護スタッフの人件費なども発生するため、維持管理コストがかさむ。
宿泊価格への転嫁にも限りがある中、利益を十分確保できるかが今後のホテル運営における焦点となる。
患者以外の需要を取り込めるか
三井不動産はホテルの想定稼働率を非開示とする。東病院に通院する患者だけでなく、エリア全体で宿泊需要を創出できなければ、十分な稼働率を維持するハードルは高いだろう。レジャーやビジネスでの利用に加え、エリア内に位置する大学機関での学会需要なども取り込む構えだ。
ただ、最寄りの柏の葉キャンパス駅前には、同じく三井不動産が開発し、2014年に開業した「三井ガーデンホテル柏の葉」(客室数166室)もある。駅から徒歩20分の距離がある柏の葉パークサイドで、どこまで顧客を引き込めるかは未知数だ。
人口減少が避けられない中、IT活用により地域住民の課題を解消するスマートシティの需要は今後ますます高まる見通しだ。将来の収益源を逃さず刈り取るため、デベロッパーの試行錯誤は続く。
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