「おじさんTikToker」をバカにする人に欠けた視点 フラットな感性の「Z世代」との距離を縮める術

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――たしかに、人口比率で見れば中高年層に比べると少ないのは事実です。

ただ、SNSでの人口で考えるとZ世代は圧倒的に多く、また、拡散力もあるんです。SNSで情報を広めてもらうという観点では、彼らのことを知るのは非常に重要になっているといえます。

Z世代に好まれるコミュニケーションとは?

――そんなZ世代に向けて打たれ、実際に成功した施策を取り上げているのが本書(『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』)です。とは言え簡単にバズれるわけではなく、Z世代のインサイト(消費者自身も気づいていない無意識の心理のこと)を見抜くのが重要だと。たとえば重要な点として、Z世代は広告に対して、(上の世代以上に)嫌悪感を持っていると書かれています。

さまざまな要因がありますが、強く感じているのは「触れてきた広告が違うこと」です。

たとえば僕は現在45歳ですが、僕が若かった頃はテレビ広告がまだまだ主流で、テレビ業界も景気が良かったため、CM1本の平均制作費が4000万円程度ありました。今では2000万円程度になっていることを考えると、かけているお金が大きかったし、結果的に質が高いものも多かったんです。

ところが今、Z世代が主に触れているYouTubeやTikTokの広告はまさに玉石混淆で、ひどくうさんくさく、怪しげなものもある。その一方で触れる広告の数は桁違いに多くなっているため、比較的、質のいい広告しか触れられなかった世代とは、広告に対する温度感が大きく異なっているんです。

――また、Z世代特有の「否定しないコミュニケーション」なども、企業側は深く学ぶ必要があると訴えられています。

基本的には、Z世代は上の世代と比べて、穏やかになってるのは間違いないでしょう。背景にあるのは成熟社会で生きてきたことで、そこには「死ぬほど頑張って、人を傷つけて踏みつけて這い上がったとしても、得られるものがこれっぽっちなら、穏やかにのんびり生きたい」という、ギリシャの公務員的な感性がある。

しかし一方で、今までのクリエイター・マーケターは肉食で生きてきており、勝ち負けや競合商品との差別化を常に考えてきたわけです。言うなれば、「どれだけやんわりと、競合他社の商品よりも、うちの商品のほうがいいかを伝えるか」に命をかけてきた。

でも、そういうコミュニケーションはZ世代には受け入れられません。だからこそ、結婚する人だけでなく、独身でいる生き方を選択した人も肯定したゼクシィのCMが話題になるんです。

競争競争で生きてきた上の世代の人間には、すぐには理解しにくい感性だと思います。実際、この本を数年前まで在籍していた広告会社のクリエイターたちに見せたところ、その多くが衝撃で、膝から崩れ落ちてましたからね(笑)。

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