「おじさんTikToker」をバカにする人に欠けた視点 フラットな感性の「Z世代」との距離を縮める術

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Z世代が愛する「TikTok」をビジネスに活用する方法

――ただ現実的な話、ビジネスの手法としてTikTokを取り入れるのは、多くの企業にとって簡単ではない印象です。これは私の友人の話なのですが、「若手がTikTokを活用したPR施策を始めようとしたが、中高年のおじさん社員が反対して頓挫した」と聞きました。理由は「TikTokで顔出しで出るなんて、まともな企業がやることではないし、少なくとも俺は出たくない」と。

おそらく、知らないからだと思います。実際、大手企業でTikTokをうまくやってるところって本当にないので、たぶんそういう「バカの壁」現象が起こっちゃってるんですよ。

しかし実際は、TikTokこそ素人が一番気軽に発信できる、最初のSNSと言っていいぐらいなんです。

――と言いますと?

他のSNSは結局、インフルエンサーとかフォロワーの多い人が見られるのですが、ランダムで表示されるTikTokは初期でもバズれる可能性があるんです。おそらく、バズる経験をまずさせるという、ある意味「下駄を履かせる」かのような運営側の方針もあるのでしょう。

そしてその結果、質の低い一般ユーザーの動画が多く、誰もが参加しやすい環境にある。その人のありのままを見せるのがTikTokなんです。

企業は今まで、インスタグラムでのブランディングや、テレビ広告で上質なイメージをつけることを一生懸命やってきたわけですが、一般ユーザーの投稿が多いTikiTokにおいて求められる発想は大きく違って、 「一般人の顔つきをどれだけ企業ができるか」という戦いの場所になっています。

そういう意味で言えば、チャンスがあるのは大企業。そもそも若い人たちからは「距離が遠い」と思われてるわけだから、そのギャップを崩せば効果も生まれやすい。それを理解して実践している企業は、まだまだ本当に少ないんですけどね。

――実際、最近では中年男性の専門家が、税金や法律、経済について短く解説する動画がよくバズっている印象です。

僕の時代は、「おじさんである」ってことだけで忌み嫌ってたんですよ。おじさんも高圧的な人が多かったし、 社会に反抗するのが若者の在り方であり、そういうのがクールなんだという価値観が少なからずあった。だから、おじさんであるだけで嫌いだった。

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ところが、 今の学生たちはすごいフラットなんです。僕自身、芝浦工業大で教授をしてますけど、「おじさんだから」と最初から心を閉ざされることはありません。

さらに言えば、このフラットさは、外国製品についても見られる傾向でもあります。たとえばコスメで言うと、韓国コスメや中国コスメが人気なのは言うまでもなく、ここ1年で第三勢力としてタイコスメが流行しています。マツキヨは今やトレンドスポットなんです。

中高年世代の中には、今でも中国や韓国製品の製品に悪いイメージを持つ人が少なくないですが、若者たちはむしろ韓国の製品を日本製よりも良い商品だと思っています。そして、そういう偏見がなくなるのは、すごく素晴らしいことだと僕は思うんです。

――フラットな感性だからこそ、属性で判断せず、その人や物の本質的な部分を見極めていると。

フラットに世の中を見られるというZ世代の特徴は、実はTikTok上ですごく体現されているわけです。しかし、実態を知らない世の中のおじさんたちは「かわいい子が踊ってるんでしょ?」「そんな場所をビジネスに使うのは嫌だ」と言ってしまう。TikTokを知ることは、Z世代のことを知ることでもあるんです。

岡本 拓 編集者・ライター

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Taku Okamoto

編集者・ライター。早稲田大学文化構想学部卒。ソーシャルゲーム会社(半年)、某ネットニュース編集部(4年)を経て、フリーランスに。2021年12月から東洋経済オンライン編集部のメンバー。「奨学金借りたら人生こうなった」「チェーン店最強のモーニングを探して」などの連載を担当。会社四季報では外食業界を担当。

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