ただ、制裁の内容をしっかりと設計すれば、負の影響を軽減することはできるし、場合によっては完全に回避することすら可能となる。その意味で私たちが支持するのは、イエレン米財務長官とドラギ伊首相が少し前に行った提案だ。
ロシア産原油に対するバレル当たりの支払単価に上限を設ける案である。ロシア産原油の大部分(およそ7割)を運んでいるのはEUや英国などの船であり、こうした状況を利用すればEUはロシアに対して優位に立てるかもしれない。ロシアの石油生産コスト(限界費用)は並外れて低いため、プーチン氏の資金源を圧迫するには価格上限を底値水準に設定する必要があるだろう。
ロシア産原油の上限設定へ
価格上限の導入方法としては、価格を直接制限するやり方のほかに、輸入関税を賦課する方法などが考えられる。関税といった税を課す方式の利点は、EUで避難生活を送っている約500万人のウクライナ難民の受け入れ費用をカバーしたり、プーチン氏の侵略戦争の影響で生活がさらに苦しくなった低所得者層を支援したりする税収を生み出せることだ。
もちろん、ロシアが安値での原油供給を拒む可能性はある。ただコロナ禍で原油価格が1バレル=20ドル前後にまで暴落していたときでさえ、ロシアが原油を最大限輸出することに強い関心を示していたことは覚えておくべきだ。さらに、輸出を拒んで産油量を減らせば、ロシアは石油輸出国機構(OPEC)と非加盟の主要産油国で構成される「OPECプラス」のメンバーとしての地位を実質的に失うことになる。ロシア経済への打撃は明白で、ルーブルも甚大な下落圧力にさらされよう。
外貨が手に入らなくなれば、プーチン氏は他国からの武器調達に難儀するに違いない。また、戦費調達のために自国通貨を増発すれば、国内のインフレは加速する。ウクライナに対するプーチン氏の戦争を止める制裁措置の立案において西側は大きな進歩を遂げている。仕事を完遂するのは今だ。
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