大学進学適性試験(SAT)の成績が悪い人は、「この手の標準テストでわかるのは、頭のよさではなく、テストで点数を取るのがどれだけうまいかだ」といった言葉に共感しやすくなる。1990年代後半に行われたある研究では、学生の「期待していた成績」「実際の成績」「成績の重要性に関する考え」の変化を大学4年間にわたって追跡調査した。
選択肢が増えても、考えるべきことは1つ
その結果、つねに自分の期待を下回る成績しかとれなかった学生は、時間の経過とともに「成績はそれほど重要ではない」と考えるようになっていた。世の中に対する私たちの考えは、自分が経験することに合わせてしだいに調整されていく。
あらゆる種類の考えは、エゴを守るために使われることがある。人間の思考は、自分の長所や短所になんらかの形で関係しているからだ。
先進国で暮らす人なら、どこに住むか、どんな仕事に就くか、誰と交際し、結婚するか、子どもを持つかどうか、どこに投資するか、心身の健康をどう管理するかなど、さまざまなことを自由に選べる。よい選択ができるかどうかは、自分の判断にかかっている。そしてその判断を大きく左右するのが、私たちの基本的な思考(マインドセット)だ。
現代人は、思いどおりにいかないことを自力で変えていく方法も手にするようになった。苦手なことがあれば、学校に行く、入門書を読む、ユーチューブで専門家による解説動画を観る、家庭教師を雇う、代わりに誰かにやってもらう、などの選択肢がある。
もちろん、こうした解決策が誰にでも効くとはかぎらないし、努力やコストに見合うかどうかもわからない。
つまり、どの解決策を試すべきかは、自分自身がいい判断をできるかどうかにかかっている。人生で直面する数々の問題のなかで、どれを解決し、どれをやりすごすのかを決めるのも「判断の問題」だ。
現代では選択肢が増えたが、物事を正確に見極める目を持つことが、(特に、長い目で見れば)大きな価値をもたらすようになっている。現代は、生まれ育った境遇によってあてがわれた生き方や職能、社会集団に自分を合わせなくても、幸せをつかめる世界なのだ。
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