「ペントハウス」に見る韓国コンテンツの強気戦略 実は世界だけじゃない、国内コンテンツも充実

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コンテンツを作る側からすれば、老若男女誰もが楽しんでくれるものを作りたいと思いますし、できれば世界の多くの人々に見てもらいたいと思うかもしれませんが、最初のターゲットをどう設定するのかによってそのコンテンツの物語や描き方、そして制作費用や取り組みなどが大きく変わってきます。

だからこそ、韓国コンテンツは企画段階から目指す先をはっきり分ける、特にそれぞれのコンテンツが国内向けなのか、世界向けなのかを分けて考えることが多いのです。

国内を意識したドラマ「ペントハウス」

1つの事例として、「ペントハウス」というドラマをご紹介しましょう。

「ペントハウス」は2020年10月からSBSという韓国の地上波で放送され、瞬間最高視聴率31.1%、平均視聴率も19%を記録した、韓国国内では社会現象を巻き起こすほどの大ヒット作です。シーズン3まで続きました。

もちろん、こちらのドラマは韓国国内で大きな反響をもたらしたことで海外でも多少話題となり、海外の韓国ドラマファンを中心に広がっています。とはいえ、「ペントハウス」は海外進出を意識して作った作品ではありませんでした。

韓国の0.1%ほどの最上流階級が集まって住む100階建ての最高級のタワーマンション「ヘラパレス」は、主人公のオ・ユニにとって憧れの場所でした。しかし、ある出来事をきっかけにユニはヘラパレスに住むこととなり、夢が現実に変わります。そんななか、自分の復讐のためにユニを助ける、最高層のペントハウスに住んでいるシム・スリョンは、彼女の耳元にこうささやきます。「今は、45階から始まるけど、もっとお金を稼いでチョン・ソジンが住んでいる85階まで上がってみて」。

「ペントハウス」は、人間の欲望はいつまでも満たされない、人間はチャンスさえあればより多くの富を得るために手段を選ばないという普遍的なテーマを描く一方で、リアリティーをまったく意識していないのかと思えるほど非現実的なことが頻繁に起きるストーリー展開が特徴的で、日本の昼ドラのように、韓国国内の、特に主婦層向けに作った作品でした。

もちろん、日本の昼ドラが好きなら日本でもこの作品に興味を持つ人はいると思いますが、もしも「ペントハウス」がグローバルコンテンツとしての作品作りを意識していたら、映画「パラサイト」のように、ドラマの背景である韓国社会をより細かく描写するなど、リアリティーをもっと強めていたと思います。

面白いのは、近年世界的に大きな反響をもたらした「イカゲーム」や「パラサイト」などは韓国社会をできるだけリアルに描き出したことで評価されています。それと比べ、「ペントハウス」は意味不明なドラマと言われるほど、現実では絶対にありえないようなことがひたすら起きていて、これは2000年代の韓国ドラマの描き方に近いものです。

なぜ韓国では「ペントハウス」が社会現象を巻き起こすほどの大人気となったのか。それは、「ペントハウス」が国内向けの作品として今の韓国のトレンドを意識していたということに尽きます。

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