「ペントハウス」に見る韓国コンテンツの強気戦略 実は世界だけじゃない、国内コンテンツも充実

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この数年、韓国では「懐かしさ」が1つの大きなトレンドとなり、1990年代、2000年代初頭の音楽やドラマなどが再評価されています。

このような流れの中で「ペントハウス」は、2000年代まで人気を集めていた韓国ドラマの作り方に近く、非現実的な展開を強めるマッチャンドラマを世の中に送り出して大成功したのです。韓国国内市場をターゲットにしたからこそ成し遂げられた結果だったと思います。

このようにコンテンツは、国内向けなのか世界向けなのかによってストーリーや描き方が異なります。またキャスティングにも大きな影響を及ぼします。「ペントハウス」に出演する役者たちは韓国では知名度が高く、演技力も認められているベテランが多いのですが、海外進出を目指すドラマや映画の場合だとまた異なったキャスティングとなります。

二兎を追う者は一兎をも得ず

基本的に企画段階から世界市場を考えるコンテンツだと、海外に多くのファンを持つ役者や、世界を舞台に活躍するアイドルグループのメンバー、もしくは海外でヒットした作品に出たことのある役者を中心にキャスティングすることが多いのです。

なぜなら、海外向けのものは国内向けのコンテンツよりリスクも大きいため、このようなキャスティングをすることによって少しでも成功の可能性を高めることができるからです。そして実際にコンテンツの制作費などに投資する側もそれを望むことが多いです。ただ、最近は新人の俳優を起用し、一夜にして世界的な俳優になった事例もあり、少しずつキャスティングへの自由が与えられてきています。

今は誰もがコンテンツを作ることができる時代です。また誰もがコンテンツのクリエイターを目指すことができる時代になりました。

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けれども、コンテンツを作る際に気を付けてほしいところは、まず企画段階から目指す先を明確にすることです。

特に海外進出を目指すのであれば、グローバル・トレンドの分析や市場調査はもちろん、規模による制作設計が必要になるかと思います。もちろん、運よくたまたま国内でも海外でも両方でバズる場合もゼロではありませんが、リアルタイムでコンテンツが溢れ出る今の時代に、「たまたま」を狙うほうがむしろ難しいと思います。

「二兎を追う者は一兎をも得ず」という言葉があるほど、第一に目指す先を決めることからがスタートです。ちなみにこの話はコンテンツだけに限らず、プロダクトやサービスなど、どんなビジネスにも大事な話なのかもしれませんね。

カン ハンナ 国際社会文化学者、タレント、歌人、株式会社Beauty Thinker CEO

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Kang Hanna

淑明女子大学(経営・統計学)を卒業し、現在、横浜国立大学大学院都市イノベーション学府博士後期課程在学中(国際社会文化学・メディア学)。韓国でニュースキャスター、経済専門チャンネルMCやコラムニストなどを経て、2011年に来日。NHKEテレ「NHK短歌」にレギュラー出演しているほか、テレビ東京「未来世紀ジパング」、NewsPicks「THEUPDATE」「WEEKLY OCHIAI」にも出演するなど、多方面で活動中。2019年には、第一歌集『まだまだです』(KADOKAWA)を出版し、第21回「現代短歌新人賞」を受賞。韓国では日本文化に関する書籍を8冊ほど出版している。

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