「日本ミャンマー協会」から企業の退会が続く事情 国軍擁護の姿勢が加盟企業のビジネスリスクに
ミャンマーにおける経済協力の推進を目的に設立された一般社団法人「日本ミャンマー協会」から、大手商社など会員企業の退会が相次いでいる。
2021年2月にミャンマー国軍が軍事クーデターで政権を掌握して以降、トヨタ自動車や伊藤忠商事などの有力企業が退会。2022年3月には三菱商事や川崎汽船、東京海上日動火災保険、SOMPOホールディングスなども脱会していることが東洋経済の取材で判明した。
クーデターを機にミャンマービジネスの魅力が低下したことが主因とみられるが、軍事クーデターを擁護する協会幹部の発言が在日ミャンマー人などからしばしば批判されており、人権上の理由もあるとみられる。日本企業の進出を主導してきた同協会の影響力低下によって、ミャンマービジネスは転機を迎えている。
「御三家」三菱商事の退会に衝撃
同協会はミャンマーで民政移管が始まった2012年3月に発足。麻生太郎元首相が最高顧問、経済産業省など中央省庁の元事務次官らが理事を務め、会長には中曽根内閣の官房副長官や郵政相などを務めた元衆院議員の渡邉秀央氏が就いている。
同協会の加盟社は125社(2021年6月末)。同協会に加入するメリットとして、ある企業は「協会が主催するミャンマーの要人との懇親会やセミナーを通じて、現地とのコネクション強化や情報収集が可能だった」ことを挙げる。そのうえで「当社の場合、そのメリットを十分に活用できなかったので退会した」という。別の企業は、「(渡邉)会長が軍事クーデターを擁護するなど、当社の考え方と合わない」ことを退会理由の一つに挙げている。
中でも、三菱商事の退会は協会にとってショックだったようだ。同社は現役の役員が協会の理事を務めるとともに、社員を協会事務局に出向させていた。また、同社の佐々木幹夫元会長が協会の副会長を務めるなど、同じく理事などを出している丸紅、住友商事とともに渡邉会長を支える「御三家」の1つだったためだ。
ミャンマーにおいて日本企業が関わる象徴的なプロジェクトであるティラワ経済特別区での工業団地開発でも、三菱商事は丸紅や住友商事とともに合弁事業の運営を担っている。その同社が3月末をもって退会し、役員や出向社員を引き揚げた。佐々木氏も同協会の副会長を退いている。