日本縦断1万キロ構想も、ロングトレイルに熱視線 歩いて大自然の素晴らしさを実感できる旅路

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さて、実際のロングトレイルはどんなものなのか。ピンとこない読者が多いと思うので、筆者の体験談を報告しよう。6年前の夏、北海道の「北根室ランチウェイ」(現在は閉鎖)を走破したときの体験談をベースに、ロングトレイルの魅力に触れてみたい。

中標津町交通センターから弟子屈町のJR釧網線美留和駅に至る全長71.4キロの北根室ランチウェイは、酪農家の方が2005年に酪農仲間ら有志7人で整備を始め、2011年に全コースが開通した。牧場、格子状防風林、沢、丘陵地方、山、湖、農園と道東の大自然の中を一本のトレイルが続いていく。北根室ランチウェイのランチ(Ranch)は大牧場のこと。実際、大牧場の中の道を進むコースが多い。

全部で6つのステージがあり、牧草地や登山道などを2泊3日で歩き通す。初日は、羽田空港から中標津空港に向かい、中標津町内のキャンプ場でテント泊。翌朝からのスタートに備えた。セイコーマートで購入したジンギスカンをコッヘルで温めて夕食。サッポロクラシック(ビール)を飲んで早めにテントに入って寝たのだが、ファスナーが開いていたのか、夜中に蚊に頭を数カ所刺され、あまりの痒さに目覚める。あいにくの出だしとなってしまった。

ロングトレイル1日目

第1ステージ:中標津町交通センターから開陽台(14.7キロ)

朝食を済ませ、テントを撤収し、スタート地点へ向かう。重さ15キロ超のザックを背負っての歩き旅が始まった。公園内の散策路を抜けて、牧場を通り、カラマツの格子状防風林の中を歩く。木に囲まれた道の先にシカがたたずんで、こちらの様子をうかがっている。立ち止まってスマホで撮影。歩き始めると、シカは林の奥へ消えていった。

防風林を抜け、今度はまっすぐの砂利道を進む。この道が長い。丘の上に開陽台の建物が見えてきたが、ザックの重さがこたえ足取りは重い。汗が出てくる。ようやくのことで開陽台に到着し、ひと休みした後、展望台に登って景色を楽しむ。広大な牧草地と防風林のコントラストに眼を奪われる。そして海の向こうに北方領土・国後島の姿を確認。「こんなに近いんだ」と痛感し、複雑な気持ちになる。

第2ステージ:開陽台からレストラン牧舎(9.9キロ)

熊よけの鈴が設置されている(写真:筆者撮影)

町営牧場を通るチップが敷き詰められた遊歩道を進む。やがてマンパスという木でできたゲートをすり抜けて林道に入る。小さな川を石づたいに渡る。牧場脇の斜面を登り、振り返れば開陽台と武佐岳がくっきり見える。牧草地の脇をのんびり歩き、しばらく行くとランチウェイの標識の横に熊よけの鈴が設置されている。「熊にあなたが来たことを教えるためカネを鳴らしましょう」と書いてあるので、思いっきり鳴らす。頼むから出てこないでくれ!

その後、新たなマンパスを越えて牧場内の道を進む。牛がのんびりと草を食んでいる。牧場を抜けると再び川の渡渉。こうした行程の繰り返しだ。前方に木立が見えてきた。標識には「ここからランニングOK」の文字。平坦な草の道が林に向かっている。林を抜け、さらに牧場脇の道を進む。次の防風林を越えると、今日の宿がある農場にたどり着いた。この日の走破距離は25キロ弱。いやあ、よく歩いた。朝7時半に歩き始め、農場に着いたのは16時過ぎ。結構な運動量である。

農場内をオーナーに案内していただく。サイロを改装して造った版画美術館には牛をモチーフにした木版画や、山を描いた油絵などが展示されている。外の庭には木や薪をあしらったオブジェも。酪農文化を昇華させた芸術世界を楽しむ。夜はオーナーと、農場で作品を制作している東京芸大OBの芸術家と3人で焼肉を楽しみながら酒盛りで歓談。濃厚な夜が更けていく。

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