日本縦断1万キロ構想も、ロングトレイルに熱視線 歩いて大自然の素晴らしさを実感できる旅路

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ロングトレイル2日目

第3ステージ:レストラン牧舎から養老牛温泉(8.9キロ)

朝、オーナーから搾りたての牛乳をいただく。「少し温めて飲むといいですよ」とのアドバイスに従い、ちょっとだけ加熱して飲む。ふくよかな味とピュアな甘みが広がる。生涯で最高の味だった。

『男はつらいよ』の記念碑(写真:筆者撮影)

農場を流れる川にかかる板の橋を越えて、2日目のトレイルをスタートした。牧草地をひたすら歩く。ときおり牛たちと目が合う。立派な体躯に圧倒される。やがて砂利道に変わり、そこに巨大な排泄物を発見した。木の実が混ざっている。熊の糞だろうか。鈴を鳴らしながらの歩行が続く。

道は養老牛温泉に向かう車道に沿って開墾されたルートになる。車道を歩かないで済むように造成してくれたものだ。頭が下がる。養老牛温泉は、映画『男はつらいよ』や『釣りバカ日誌』のロケ地になった。その看板や記念碑を撮影してひと休み。

第4ステージ:養老牛温泉から西別岳山小屋(17.4キロ)

養老牛温泉の先に楽しみがあった。秘境の「からまつの湯」。パウシベツ川沿いにある無料の露天風呂だ。源泉を川の水で温度調節している。さっそく浸からせていただく。せせらぎの音をBGMに開放感たっぷりで、最高の野天風呂を独り占めだ(2021年に事故が発生し、現在は閉鎖中)。

温泉でさっぱりした後、再び歩き始める。モアン山という山の麓の丘陵地帯に差し掛かる。あまりにもいい景色なので、トレイルの脇に腰をおろしてランチタイム。弁当を食べ、コーヒーを淹れてくつろぐ。そのとき、放牧地になっている丘陵地帯にいた牛の群れの先頭にいた一頭が丘を駆け下り始めた。すると残りの牛も後に続いていく。

ランチタイムを終えてトレイルを歩き始めると、牛の群れが迫ってくるではないか。まさか、唯一の人間を目指して来ているのか。気になりながらも歩いていくと、牛たちは目の前までやって来た。そして数頭が柵ぎりぎりまでやってきて、こちらをにらみつける。

牛たちの“歓待”を受ける(写真:筆者撮影)

柵の間から鼻先をだしている牛もいる。その数十数頭。進行方向の道に沿ってこちらに顔を向けているのだ。「まあ、まあ、落ち着いて。何もしないからさあ」と穏やかなふりをして牛たちをなだめながら、ゆっくりと進む。彼らの息遣いが荒いように感じる。思いもよらぬ“歓待”にビビりながらも、辛うじてその場を通過。しばらくしても「モー、モー」という鳴声が聞こえていた(後に地元の方に話をうかがうと先頭の牛がボスで、偶然見つけた筆者に興味をもって近づいただけだろうとのことだった)。

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