JTは、なぜ「桃の天然水」をやめるのか 残った自販機事業にメーカーから熱視線
JTの小泉光臣社長は飲料事業について、2014年12月の東洋経済のインタビューで、「たばこで培ってきたノウハウや技術を香りの面で活かし、差別性のある商品を出せている。ただ、マーケティング能力が弱い。ここを磨き上げれば、まだチャンスがある。ルーツ、桃天に加えた、第3の柱を立てるしかない。事業譲渡? 縁起でもない」と、飲料事業を存続させる意向を示していたのだ。そこから一転して、事業撤退を発表したことになる。
この先、注目が集まるのが、自販機事業の進退だろう。今回、自販機事業の撤退は見送ったが、「現状通りの営業を続けるか、提携や売却を検討すべきか、さまざまな可能性を検討したい」と大久保副社長は明かす。全国に26.4万台の自販機を持つJTの自販機事業は、飲料メーカーにとって魅力的な買収先。手に入れることで、自社商品の自販機販路を一挙に拡大することができるからだ。
JTの場合、自販機事業の中核子会社、ジャパンビバレッジ株式の70%を保有する。ジャパンビバレッジの純資産は約571億円(2014年3月末時点)。買収額は「700億~800億円くらいになるのでは」(M&A仲介会社首脳)とも見られている。
”嫁入り先”はサントリーかアサヒか
自販機事業の買収に名乗りを上げるメーカーとして、目下有力なのは、現在ジャパンビバレッジの第二位株主、サントリーフーズを傘下に持つ、サントリーだ。サントリー食品インターナショナルの鳥井信宏社長は、2014年12月期の中間決算会見で、「全体の人件費が上がっていることを考えると、オペレーターからすれば、隣同士の自販機を別のトラックで運ぶのはあほらしいですから、一台で運ぶと言ったことが、これから考えられる」と、再編の必要性を示唆した。
ほかには「鳥居薬品をJTに売却したアサヒグループホールディングスがJTと親密」(前出のM&A仲介会社首脳)とされており、今後ジャパンビバレッジがどこに“嫁入り”するのかは、まだ見えていない。
JTは飲料製品の製販事業から撤退することで、今後は「本丸」であるたばこ事業を競争力を強化するため、投資を優先させる。同様に非中核事業の医薬事業と加工食品事業については、「中長期的なJTグループの利益成長を補完するという、これまでの位置づけに変わりはない」(大久保副社長)としている。
突然の事業撤退は飲料業界にどのような余波をもたらすか。飲料メーカーによる、JT自販機の争奪戦は、すでに始まっている。
(撮影:吉野純治)
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