――基本的な話になりますが、そもそも医師会の役割は何でしょう。
横倉:そこが問題で、実を言うと国民の皆さんだけでなく、会員自体も医師会の役割を自覚していないところがありました。それで、僕が会長になったときに綱領を作りました。
それは一口で言うと「国民のための医療体制を確立する」、ということです。もっとわかりやすいところで言えば、医師会会員になると地域の学校医や中小企業の産業医を担当してもらったり、住民健診に関わってもらったりしています。最近は違いますけれど、昔は、「学校医になって初めてお医者さんとして地域の人に認められた」という医師もいたんですよ。
政治と医療は切っても切れない関係
――そうなんですね。そうやって地域活動を行っている一方で、医師会というと日本の医療制度を担う厚生労働省や、いわゆる厚労族と呼ばれる国会議員に強い影響を与えている、政治に関わっている組織というイメージがあります。
横倉:それは、医療の制度が政治と密接な関わりを持たざるをえないから、なんです。簡単に言うと、政治と医療は切っても切れない関係、ということです。
医師会は1916年に設立されましたが、特に政治的な傾向が強くなったのは、1961年の国民皆保険制度ができてからですね。それまでは医療保険が十分整備されておらず、お金を払えば自由診療でいい医療が受けられていた一方で、そこまでお金を払えない人たちはいい医療を受けられなかった。それを変えたのが国民皆保険制度です。
ただスタートしたときは、保険で使える薬も行える治療も限られていた。それを「こういう薬は保険で使えるようにしてほしい」「こういう治療は必要」というように、提言していったんです。
――当然、予算を持っているのは国だから。
横倉:医療の制度もすべて法律で決まりますからね。報道ベースだと、「医師会は医師の利益のために動く」というふうに見られてしまうけれど、実際はそうではないです。国民によりよい安全な医療を、保険診療で行えるようにという国民医療を進める目的で活動をしています。
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