「就活で人生を諦めた」大卒27歳男性の生きる道 スーパーのアルバイトで得た社会との接点
そうこうするうちに、コロナ禍になり、外出もままならない日々が訪れた。悠さんは、家に引きこもるようになった。毎日YouTubeを見たりして、ぼんやりと過ごしていたという。
「そのころは、人生を諦めていましたね。小・中学時代にいじめられていた日々とは、また違うつらさでした。もう消えてしまいたい、自分なんていなくなったほうがいいかな、と思うこともありました」
文部科学省の「学校基本調査(平成29年)」によると、大学卒業後に進学も就業もしない人の割合は7.8%。大卒者の13人に1人が、ニートや無職になっているという現実がある。その中には、働く意志はあるのに就職活動がうまくいかなかったという人もいる。悠さんもその1人だった。
近年、少子化で学生に対する大学のサポートは手厚くなっている。学生数の多い私立でも、「キャリア支援」「就職支援」の体制が整い、相談体制やプログラムも充実している。だが、そうした大学の支援は、たいていは学生が卒業するまで。就活に失敗して卒業したとたん、社会との接点も切れてしまう人もいるのだ。
あの電話がなかったら…
「ずっとこのままでいいのか? このままではいけない。勇気を出そう」
悠さんは、力を振り絞った。HPを検索していて見つけた、「ひきこもりやニートの社会復帰を支援する」といううたい文句のサポート団体に、連絡を取ったのだ。
実は1年以上前から見つけて知っていたが、連絡する勇気が出ないでいた。「相談したいことがあります」というメールを書いたものの、送信ボタンがなかなか押せなかった。迷いに迷った末、ついに、ボタンを、押した……。悠さんが連絡したのは、福岡市の一般社団法人「八おき塾」。説明会に行き、入塾するかどうか迷っていたところ、代表の人から電話があった。
「またおいでよ」
悠さんは、あとでこう振り返る。
「あの電話がなかったら、行っていなかったかもしれません」
八おき塾の代表、鳥巣正治さんは言う。「『八おき塾』という名前には、『何回転んでも、また起き上がって前に進んでいこう』という意味が込められています」
八おき塾の毎週1回の若者との面談では、「プラス3、マイナス1」というルールがある。必ず3つ、「いいこと」を話し、最後に1つ、「できなかったことや課題」を話すというものだ。
「できないことばかり考えたり、反省しすぎると、やる気が出ない。プラス3マイナス1なら、2つのプラスが残る」(鳥巣さん)