「就活で人生を諦めた」大卒27歳男性の生きる道 スーパーのアルバイトで得た社会との接点

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八おき塾での就労訓練を経て、悠さんは就職活動を再開した。10回目の面接で、ようやく今のバイト先に雇ってもらえることになった。

最初のころは、レジ打ちで食品をかごに移すときの入れ方がわからず、焦ってしまっていた。牛乳は、立てて入れるのか横にするのか……? 

いまだに苦手なのは、人に頼みごとをすることだ。たとえばレジに並ぶ客の行列が長くなると、呼び出し機を使ってほかのスタッフに「応援要請」をしなくてはいけない。

「さっき呼んだばかりなのにまた呼ぶの?と思われそうで……。ほかの人にも、品出しとかやることがたくさんあるのに。お客さんにも、スタッフにも迷惑をかけないようにするのが難しいです」

やりがいを感じられるようになった

それでも、できるようになったこと、やりがいを感じられるようになったことも少しはある。

あるとき、50代くらいの女性のお客さんから、声をかけられた。

「もう、お仕事は慣れましたか?」

「3カ月以上たちますが、全然だめです」と答えると、「いつも見てますけど、お仕事がていねいで、頑張っていますね」と言われた。

不思議と悲壮感はなかった

びっくりしたが、うれしかった。

いろいろな経験を重ねることで、困ったことがあっても「この間も乗り切れたんだから、大丈夫」と思えるようになってきた。これから先のことはわからないが、とりあえず前に進まないと、と思っている。

そんな悠さんに聞いた。

「友達が欲しいと思いますか?」

答えはすぐに返ってきた。「今は友達がいてもいなくてもいいと思っています」

不思議にと、悲壮感はなかった。友達はいなくても生きていける。でも、人とのつながりがなくては、人は生きていけない。

外に出ることで、人とのつながりは確実にできる。勇気を出してこの取材を受けたことも、すべて悠さん自身が開いた扉。少しずつ、悠さんの世界は広がっている。

(取材・文/臼井美伸)

臼井美伸(うすい・みのぶ)/長崎県佐世保市出身。出版社にて生活情報誌の編集を経験したのち、独立。実用書の編集や執筆を手掛けるかたわら、ライフワークとして、家族関係や女性の生き方についての取材を続けている。佐賀県鳥栖市在住。
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