その根拠としているのが、イスラエルから報告されたデータだ。
イスラエルは他国に先んじて国民にワクチン接種を行い、得られたさまざまなデータを公表している。その1つが、医療従事者を対象に実施したデータで、「オミクロンに対する中和抗体価は、4回目の接種で上がらない」という結果を報告している。それを根拠に「感染予防効果は低い」と考える人が日本にもいるわけだが、中和抗体価が上がらないという点について、宮坂さんは違う見解を持つ。
「イスラエルも含め、ワクチン接種の効果に関するデータはこれまでたくさん出ています。それらの論文を集めてメタ解析し、それを“見える化”したのがこの図(下図)です。世界的に権威ある有名な科学雑誌『ネイチャー・メディシン(Nature Medicine)』に投稿されたもので、アメリカの研究者が発表しています」
ちなみに、中和抗体とはウイルスを中和(無害化)させる能力のある抗体のこと。すなわち、中和抗体=感染を予防する力、とみていい。
ワクチン接種回数と中和抗体価の関係
この図は、新型コロナウイルスに対する中和抗体価がワクチン接種1回目、2回目、3回目でどう上がるかをみたものだ。武漢株(青線)やデルタ株(茶線)では、2回目の接種では大きく上がり、3回目はさらに上がっている。ところがオミクロン株(赤線)を見ると、1回目、2回目でもあまり中和抗体価は上がっていない。しかし、3回目接種すると免疫が反応し急激に上がる。
「その後の研究によると、4回目でも同じぐらいの高い中和抗体価が得られ、その効果が3回目よりも持続する可能性があるとのことです。こうしたデータを見ても、オミクロン株に対する防御のためには、3回目はもちろん、4回目の追加接種も必要。政府はもっとこういうデータをきちんと出して、ワクチン接種は4回目であっても必要な人には実施したほうがいいことを国民に伝える必要がある」と宮坂さんは言う。
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