なので、そんな「余剰金」を手にするなんて私ごときには一生かかってもありえないことで、そんなことが起こり得るのは親の代からの超資産家とか、あるいは何かモノスゴイ成功を収めた人とか、つまりはそういう自分とはまったく無縁な超スペシャルに恵まれた人の遠い世界の出来事なんだと心の底から諦めきっていたのである。
それがですよ、スペシャルに恵まれるどころか、会社を辞めてガクッと収入が減った後に、まさかのそんなことが起きちゃったのだ!!
いやー愉快愉快! 人生って素晴らしい~!!
……と喜んでいると思うでしょ?
ところがまったくもって、そんな場合じゃなかったのである。
「お金の行き場」問題発生!
というのもですね、ことここに至って「新たな問題」が浮上してきたのだった。
すなわち、この「もうそんなにいらない」となったとたんにワラワラと集まってきてしまったお金さんたちの「行き場」を、いったいどうしたものかという問題である。
え、なに言ってんだって? 自慢かよって? 余ったお金なんだからハイハイどーぞなんでも好きに使えばいいだろーがって?
はい。私もこんなことになる前なら絶対そう思っていたと思う。何しろ余ったお金。どう使おうが自由。たまにはパーっと贅沢なもんでも食べるとか、ホテルのスイートルームに泊まってみるとか、ブランド物のドレスやらバッグやらを買うとか、何の憂いも心配もなくせっせと使ってしまえばいいのである。
だがしかし、そんなカンタンなことじゃなかったのだ。
何しろ私、「買わない生活」にどっぷり幸せを感じているのですよ。贅沢な寿司なんかより家のいつものちゃぶ台で玄米飯と漬物が食べたいし、スイートルームよりノーエアコンの自宅で暑さ寒さを味わっていることが圧倒的に気楽で楽しいし、自転車生活を満喫している身としてはドレスより体に馴染んだヨレヨレジーンズとシャツが掛け値なく最高なのだ。
そーなんだよこんな輩だからこそ、ぼやぼやしているとフト気づけばお金が貯まってしまうのである。つまりは今の私の幸せのモトはことごとく「買わない」ことによって得ているので、不用意にうっかり何かを「買う」となれば、どう考えたって幸せどころか不幸・不快がやってくること100%間違いなし。となるとうっかり使うこともできないわけですよ。
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