解雇される人の現実をちゃんと知っていますか 理不尽な会社のリストラへの対抗策と心構え

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正当な争議行為に刑事罰を科すことはできません。また、使用者に損害を与えても労働組合、またはその組合員に対し損害賠償を請求することはできません。多大な損失が発生したとしてもすべて免責されます。これは憲法と労働法によって定められています。ただ、実際にはそうとうな覚悟が必要です。

労働審判で迅速な解決に導く方法もあります。労働審判とは、不当解雇などに代表される労働者と雇用主との間のトラブルを、労働審判官1名と労働審判員2名が審理し、迅速かつ適正な解決を図ることを目的とする裁判所の手続きのことです。通常の裁判手続きよりもスピーディーに解決することを目的に導入されました。

しかし、労働審判をおこなっても得られるものは給料の5カ月分程度です。給料が30万円なら30万円×5カ月=150万円が実入りです。そこから裁判費用や弁護士費用を支払えば約半分しか残らないのが一般的です。

労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査によると、事案の内容別にみた解決金額は、「解雇」の場合、最も多いのは「100万~200万円未満」の28.7%、次に「50万~100万円未満」の23.8%となっています。

会社との対峙には覚悟が必要

連合総研レポート(2019年5月号)では、労働審判の7割以上が調停で解決されていることが明らかにされています。労働審判に異議が申し立てられないケース、個別に和解が成立し取り下げられるケースもありますから、実際はさらに高まることが考えられます。

平均審理期間は80日です。最高裁によると、2018年に終結した労働事件の平均審理期間は14.5カ月です。早期解決は双方にとって大きなメリットです。

労働審判での結果に納得いかないので本訴で争うという人もいるかもしれません。本訴に移行し、さらに上告審で争うと数年かかります。勝訴しても解雇時以降のバックペイ(解雇~現在までの未払給与)が全額支払われることはまずありません。精神的損害が発生した場合は慰謝料請求も可能ですが、認められるためのハードルはかなり高くなります。

会社組織において、嫌な上司と人間関係性を構築することは大変なことです。しかし、上司には人事権があります。どんなひどい上司でも人事権を行使されたら、部下は抗うことが難しくなります。会社を相手に争うには根気が必要で、結果的に復職できたとしても茨の道が待っているという厳しい現実もあるのです。

尾藤 克之 コラムニスト、作家、著述家

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びとう かつゆき / Katsuyuki Bito

東京都出身。議員秘書、大手コンサルティングファームで、経営・事業開発支援、組織人事問題に関する業務に従事、IT系上場企業などの役員を経て現職。現在は障害者支援団体のアスカ王国(橋本久美子会長/橋本龍太郎元首相夫人)を運営しライフワークとしている。NHK、民放のTV出演、協力多数。コラムニストとしても、「JBpress」朝日新聞「telling,」「オトナンサー」「アゴラ」「J-CASTニュース」で執筆中。『あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』(三笠書房)、『即効! 成果が上がる 文章の技術』(明日香出版社)など著書多数。埼玉大学大学院博士課程前期修了。経営学修士、経済学修士。

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