2003年にプーチンはウクライナ侵攻を目指した プーチン元側近が語る、ウクライナ侵攻の動機

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サルスキー氏は寄稿をこう結んでいる。「2008年のNATOサミットでウクライナとジョージアに準加盟を認めていたら、10年後の今はどういう年になっていただろうとの思わざるをえない」。「何と致命的な決定をしてしまったのだろう」。

しかし結局、このサルスキー氏の悔悟は生かされなかった。2022年2月末のウクライナ侵攻直前まで国際社会は、ウクライナ国家そのものを否定して解体に踏み出したプーチン氏の異常な執念に気付かなかった。

「歴史的ロシア」の回復こそプーチンの狙い

イラリオーノフ氏はプーチン氏の今後の狙いについて、「彼の言う『歴史的ロシア』の回復だ。ウクライナ、ベラルーシ、バルト3国、モルドバの占領を目指している」とみる。仮に将来、バルト3国を攻撃することになれば、NATOへの攻撃を意味する。

100日目を過ぎたウクライナ侵攻。戦況は膠着状態に陥り、深刻な国際的食糧危機まで引き起こしかねない状態だ。国際社会ではプーチン氏を追い込みすぎるのは危険であり、ウクライナが一定の譲歩をして早く停戦に持ち込むべきとのリアリスト的主張もじわじわと広がりつつある。

国際社会の今後の対応はこれからの戦況次第という側面も相当あるだろう。いずれにしても死活的に重要なのは、プーチン氏の強硬な言説に惑わされず、本当の狙いを見極めることだ。筆者としては、国際社会がサルスキー氏の悔悟の言葉も噛みしめ、10年後の世界がどうなるのかを見据えながら今後の対応をウクライナと話し合うべきと思う。

吉田 成之 新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長

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よしだ しげゆき / Shigeyuki Yoshida

1953年、東京生まれ。東京外国語大学ロシア語学科卒。1986年から1年間、サンクトペテルブルク大学に留学。1988~92年まで共同通信モスクワ支局。その後ワシントン支局を経て、1998年から2002年までモスクワ支局長。外信部長、共同通信常務理事などを経て現職。最初のモスクワ勤務でソ連崩壊に立ち会う。ワシントンでは米朝の核交渉を取材。2回目のモスクワではプーチン大統領誕生を取材。この間、「ソ連が計画経済制度を停止」「戦略核削減交渉(START)で米ソが基本合意」「ソ連が大統領制導入へ」「米が弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約からの脱退方針をロシアに表明」などの国際的スクープを書いた。

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