サルスキー氏は寄稿をこう結んでいる。「2008年のNATOサミットでウクライナとジョージアに準加盟を認めていたら、10年後の今はどういう年になっていただろうとの思わざるをえない」。「何と致命的な決定をしてしまったのだろう」。
しかし結局、このサルスキー氏の悔悟は生かされなかった。2022年2月末のウクライナ侵攻直前まで国際社会は、ウクライナ国家そのものを否定して解体に踏み出したプーチン氏の異常な執念に気付かなかった。
「歴史的ロシア」の回復こそプーチンの狙い
イラリオーノフ氏はプーチン氏の今後の狙いについて、「彼の言う『歴史的ロシア』の回復だ。ウクライナ、ベラルーシ、バルト3国、モルドバの占領を目指している」とみる。仮に将来、バルト3国を攻撃することになれば、NATOへの攻撃を意味する。
100日目を過ぎたウクライナ侵攻。戦況は膠着状態に陥り、深刻な国際的食糧危機まで引き起こしかねない状態だ。国際社会ではプーチン氏を追い込みすぎるのは危険であり、ウクライナが一定の譲歩をして早く停戦に持ち込むべきとのリアリスト的主張もじわじわと広がりつつある。
国際社会の今後の対応はこれからの戦況次第という側面も相当あるだろう。いずれにしても死活的に重要なのは、プーチン氏の強硬な言説に惑わされず、本当の狙いを見極めることだ。筆者としては、国際社会がサルスキー氏の悔悟の言葉も噛みしめ、10年後の世界がどうなるのかを見据えながら今後の対応をウクライナと話し合うべきと思う。
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