そしてマスクの室内での着用義務もほとんどの場所で解除される予定だ。だがマスクもグリーンパスもない自由な夏を迎えよう!と意気込む人々がいる一方で、まだまだ慎重に対応したいと考えるイタリア人も意外なほど多いようだ。
実際、マスクの着用義務撤廃は「すべての」場所ではなく、公共交通機関では義務を続けるべきといまだ議論が続いている。「9月からの再びロックダウンなんて、絶対に避けたいから、もう少しの間、もう少しだけ、我慢しようよ」そんな考えが政府にも、慎重派の人々の間にも、あるようだ。爽やかな初夏の気候が続いている6月初旬、スーパーで買い物をしてレジへ並んだら、約半数の人がマスクをしていて驚いた。
前述の看護師さんは「規制が解除された途端に、まだマスクしているなんてバカだとか大袈裟だとか、なんで手洗いしなきゃいけないんだとか、そういう人が多いですが、現場スタッフは秋に向けてとても危機感を感じています。5月に感染者が増えたときは、医療スタッフも、ブースター接種していても何度も感染し、人手が足りなくて困ったほど。それが繰り返されないことを祈ります」という。
オミクロン/BA.5株の感染者がポルトガルで、ドイツで不気味に増えてきているという。そしてイタリアでもここ数日で感染者数が激増し、14日には感染者数数3万9474人、陽性率は17%を超えたという報道もあり、一抹の不安がないとは言い切れない。
「日本人を見習うべきだ」
そんなイタリアでは今、マスクの義務を全廃すべきか、義務がなくなっても着用すべきかどうかが盛んに議論されている(ただしここで問題になっているのは、室内でのマスクをどうするかどうかという話で、外ではほぼ完全にノーマスクだ)。
義務は解除してもつねに携帯して、必要な場面には使用できるようにすべきだ、と保健省次官のピエルパオロ・シレーリ氏は言う。それって日本人なら当たり前のことだよね、と私が内心思っていると、あるテレビの討論会では「日本モデルにしたらいい」「日本人を見習うべきだ」「日本人ならどうしたらいいかよく知っている」と何人ものコメンテーターが言っていた。
権力から義務付けられなくても必要であればマスクをしたり、自粛ができる。自分を守るためだけでなく他人のためにマスクをつける。そんな日本人の大人な対応が世界で認められているのだ。人生の半分近くをイタリアで暮らす私も、日本人であることを誇りに感じられた瞬間だった。
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