黒田総裁発言の騒動が示した「リフレ派の終わり」 GDIが示す「所得環境の厳しさ」を重視すべきだ

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黒田日銀総裁は8日の衆院財務金融委員会で、6日の講演における家計の値上げ許容度についての発言を「撤回する」とした(写真:時事通信)

黒田東彦・日本銀行総裁は6月6日、東京都内で講演し、商品やサービスの値上げが相次いでいることに言及したうえで「日本の家計の値上げ許容度も高まってきている」と述べ、これを持続的な物価上昇を実現するための「重要な変化」と形容した。

これがたいへんな批判を浴びて、8日に黒田総裁が撤回したことは大々的に報じられているとおりである。

しかし、この発言は予定稿どおりの発言であり、黒田総裁による「失言」というのは正確ではなく、純粋に描写が政治的配慮を欠いた、ラフに言えば民意との齟齬があったという事案と言える。

黒田総裁の発言は日銀の政策姿勢に沿ったもの

擁護するわけではないが、発言はこれまでの政策姿勢と何ら矛盾しない。

2013年以降、アベノミクスの名の下でリフレ政策が目指したのは拡張的な財政・金融政策により日本の民間部門(とりわけ家計部門)の粘着的なデフレマインドを払拭し、インフレ期待を底上げしようというものだった。それは物価上昇(ラフに言えば値上げ)が普通に行われる社会を目指すということでもあった。

物価上昇を起点に賃金上昇も起こり、景気も回復する――。物価上昇が「原因」で景気回復が「結果」というリフレ派と呼ばれる人たちの思想は、筆者などエコノミストの一部からは明らかに倒錯していると指摘されたが、その政策思想を民意を受けているはずの国会議員の多くが熱狂的に支持したのが9年前だ。

そして、現在、世界的にインフレ懸念が高まろうとも緩和路線を続けて、円安に躊躇することなく指値オペで金利を抑え続けるという黒田体制の路線は、是非は別にして、一貫性がある。

「日本の家計の値上げ許容度も高まってきている」との発言はインフレ期待の底上げが実現しつつあるという趣旨を含んでいたと思われるが、「値上げを受け入れている」とのヘッドラインに変換されたことも相まって世論の大きな反発を招き、新聞・テレビ・雑誌を筆頭に多くのメディアがこの発言を批判的に報じた。正直、言葉尻を捉えるという類いの報道であるとも感じるが、この騒動は「いかに日本という国において物価上昇が受け入れられないか」を示したものともいえる。

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