黒田総裁発言の騒動が示した「リフレ派の終わり」 GDIが示す「所得環境の厳しさ」を重視すべきだ
実質GDPと比べて実質GDIの停滞は著しい。両者の差は交易条件の変化(=交易利得・損失)であり、海外への所得流出(交易損失)が大きくなれば実質GDIが低下する。これは当然、物価上昇に伴う実質所得環境の悪化も示している。
巷間言われる「悪い円安」論も結局、家計部門のコスト負担を端的に述べた議論であり、「円安の良し悪し」というよりも「実質所得の良し悪し」が本質的な問題の所在である。その意味で円安は輸入物価上昇を通じて交易損失を拡大する方向に作用するので「悪い」という判を押す向きが多い。
もちろん、一方で大企業・輸出製造業を中心に企業利潤は増えるため、「良い」ともいえる。だが、経済主体の「数」で言えばおそらく「良い」という人よりも「悪い」という人が多いからこそ、昨今の「円安」や「値上げ」の話でこれほどまでに悲観的な空気が充満するのであろう。
いずれにせよ今回の騒動で「世論の物価上昇への嫌悪感」と「日銀の金融政策」という2つの論点が接近してしまったのは間違いない。政府・日銀としては極力避けたかった事態のはずであり、金融政策に距離を置いてきた政府の挙動に変化があるのかどうかに注目している。
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