日本とフランス「コロナ後の社会」はこんなに違う メディアだけが恐怖をあおっている状態

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スーパーやお店の対応もそれぞれで、入り口に「マスク着用推奨」と書かれた張り紙がされているお店もまだある。娯楽・文化施設に関しては、2022年4月での映画館の観客動員数は、2019年4月と比べると34%減となっており、特に室内での娯楽・文化施設はまだ客足が完全には戻ってきていない状態といえる。

くみ : 握手やビズは確かに少なくなった。私の場合は友人知人と会っても、お互いに少し見合って相手の様子を探って、結局何もしないで口頭と笑顔だけであいさつする場合が一番多い。

一方で、久しぶりの親密な集まりだったり、あるいは人によってあまり気にしない人だと握手やハグ付きのビズもまだまだ健在だし、最近また多くなってきた気がする。

出張や旅行もフランスではだいぶ戻ってきたよね。ただ、日本との関係で言うと、日本のまだ厳しい水際対策にロシア上空を飛行機が回避する問題が加わってしまったので飛行時間も長くなって航空運賃も上がったとか……。

フランスから日本へ往復する在仏フランス人も日本人も増えたけど、日本からフランスに出張や旅行に来る人は相変わらずかぎられている印象が強いね。

パンデミックを待っているような報道

エマニュエル : 少しずつ段階的にコロナ以前の習慣を取り戻しつつあるけれど、完全に以前のようになるのは秋以降になるかもしれないね。とはいえ、フランスの多くの医者が言っているように、また新たな変異株が秋ごろに現れるかもしれないし、重症化率やワクチンでの免疫が効くのかどうかを様子見している段階といえる。政府はすでに基礎疾患を持つ人や高齢者向けにワクチンの新たな接種を計画しているそうだ。

くみ : 寒くなってくると風邪をはじめ病気が流行るのは仕方のないことだけど、しばらく落ち着いているコロナがまた脅威をふるうかもしれないというのはあり得る話よね。サル痘のニュースもあるし、こうなってきたらコロナ以外でも感染病が問題になることももちろんあるし。

エマニュエル : 確かに規制解除以降、メディアでは毎月のように何かしら新たな危険性のある感染病についての記事が書かれていたりして、2019年以前にはこうも立て続けに感染病に関してメディアが扱うことはなかった。まるで新たなパンデミックを待っているかのような感じさえある。

なんだか社会が常に不安な状態であるような、感染病なしには生きていくことができないようなといった感覚は規制解除の段階に見られる興味深い心理状態の一面と考えられる。

佐々木 くみ 執筆家、イラストレーター

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ささき くみ / Kumi Sasaki

東京生まれの30代。フランス在住10年を超す。2017年10月に、エマニュエル・アルノーと共著で自らの体験をつづった『Tchikan(痴漢)』をフランスで出版。イラストも手掛けた。

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エマニュエル・アルノー 小説家

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Emmanuel Arnaud

1979年生まれ、パリ出身。2006年より児童文学、小説、エッセーをフランスにて出版。2017年にThierry Marchaisseより佐々木くみとの共著『Tchikan』を出版。2000年代に数年にわたり日本での滞在、および勤務経験を持つ。個人のサイトはこちら

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