地味な仕事一筋14年、転職できるかどうか リストラ連発の半導体メーカーに勤務

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そもそもマニュアルとは、業務の品質管理や均一化のために作成するものです。こうしたニーズは、成長過程にある企業においては、つねに存在するのだと思います。

成長企業ついでに話をすると、中川さんがご存じのマニュアル的な話とは性質は異なるのかもしれませんが、たとえばIPOを狙うベンチャー企業などが上場申請にあたって業務などのフローチャートやマニュアル、規定を作成するというのも、大きな視点で考えると関連業務となります。直接ではないかもしれませんが、今までの経験を応用できる可能性があります。

過去の経験が決め手に

このように考えますと、おそらく中川さんが考えていらっしゃるよりも、かなり多くのニーズが存在すると思います。そしてそのうえで考えたいのは、単なるマニュアル作成にとどまらない付加価値を中川さんとして提供できるか否か、つまりそういった経験をしてきたか、が勝負の決め手です。

先ほどマニュアルの持つ目的のひとつは業務の品質管理、均一化と申し上げましたが、マニュアル作成に付随する付加価値は、現在やっている業務の棚卸しを通じて改善余地のある業務を特定し、よい方向に変えていく、という機能もあるのでしょう。こう考えてくると、中川さんが「単純なマニュアル作成」だけでなく、「マニュアル作成を通じた業務改善」をどれだけ提供してきたか、といったことが転職の可否を左右しそうです。

どんな業務においても「右から左に受け流す」のではない、プラスアルファの付加価値(とその経験・スキル)が個々の転職者にとっての武器なのだと思います。言い換えると、これは与えられた仕事だけでなく、ご自身できちんと考え、判断し、受け身ではなく積極的に仕事に取り組まれてきたか否か、ということであり、やはり採用者からすると重要なチェックポイントのひとつになるのだと思います。

世の中に転職者はたくさんいます。そしてその誰もが派手な経験とキャリアを積んできているわけではありません。派手さはなくともコツコツ仕事をしてくる中で、着実に成長することで転職につなげている方も多数おりますので、心配は無用です。キャリアとは長期のマラソンですので、一発屋よりもコンスタントにヒットを打てるほうが重宝される場面も多数あります。

やるべきことは、ご自身の中で上記のようなお持ちの経験の応用をどのようなシーンで見いだせるか、そしてそれをどう合理的に説明できるか、といったことを考えつつ、ご自身にとっての転職可能性を探っていく、ということなのではないでしょうか。

転職をするにせよ何にせよ、キャリア関連の行動のスタート地点は、ご自身の経験の棚卸しと、それをどう活用できるか、そしてその市場価値はどうの程度か、といったあたりの調査です。

そういった作業とご自身との対話を通じて自分にとってのベストを見つけていくのが転職へのプロセスでもあります。そのような作業を通じて、中川さんがよりよい仕事を見つけられるよう応援しております。

※安井さんへのキャリア相談は、こちらまでお送りください。

安井 元康 『非学歴エリート』著者

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やすい もとやす / Motoyasu Yasui

MCJ社長兼最高執行責任者(COO)。アニメーションの企画・制作を手掛けるベンチャー企業を経て、MCJにて東証への上場を経験。その後、経営共創基盤にて戦略コンサルタントして9年間活躍し、2016年3月にMCJに復帰。著書に学歴コンプレックスに悩みながらも独自の方法でキャリアを切り開いてきた様子を描いた『非学歴エリート』(飛鳥新社)や、自分ならではの人生を生きる術を描いた『極端のすすめ』(草思社)等がある。

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