フランスが「日本の旅行再開」に熱視線を送る事情 2023年のラグビーワールドカップを呼び水に

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この見本市に参加した地域の中で、日本からの観光客増に期待を高めるのがフランスのオクシタニー地域圏である。オクシタニー地方観光局魅力向上担当ディレクターのマルク・ファレ氏は、今後の観光戦略についてこう語る。

「私たちの戦略は2つ。1つはグリーン・ツーリズムで、もう1つは2023年のラグビーワールドカップ。今後狙っている海外マーケットはいくつかあるが、日本はそのうちの1つだ」

オクシタニー地方観光局魅力向上担当ディレクターのマルク・ファレ氏(写真:筆者撮影)

フランス南西部に位置するオクシタニー地域圏は、南を地中海、西にスペイン国境があるピレネー山脈が走り、豊かな自然を擁している。トゥールーズ、モンペリエといった大都市がある一方で、カルカッソンヌやニームといった古代ローマ時代の遺跡が残る町や、魅力的な村々が点在している。

ラグビーを観光の呼び水に

そのオクシタニー地域圏でもっとも盛んなスポーツがラグビーである。「オクシタニーはラグビーが盛んだが、対外的にはそれほど有名ではない町もある。ワールドカップをきっかけに観光プロモーションを行いたい」とファレ氏は語る。

5月20日にトゥールーズのオクシタニー地域圏庁舎にて行われた記者発表会にて日本代表のベースキャンプ地の決定発表がされた(写真:© Region Occitanie)

オクシタニー地域圏は、観光戦略として2016年から日本の優先順位を高くしてきた。2019年に日本で開催されたラグビーワールドカップでは、同大会期間中に地域圏議長と副議長を日本へ派遣。日本代表を含むナショナルチームの受け入れ地となるべく立候補し、オクシタニー地域圏の魅力と地域の持つインフラ水準についての説明を行った。

そして今年5月、同地域圏にあるトゥールーズが、ラグビーワールドカップの日本代表のベースキャンプ地に決定した。

オクシタニー地域圏議長のキャロル・デルガ氏は、「日本との連携は、わが地域圏の国際案件の中でも最優先事項のひとつ。私はこれまで3回の訪日ミッションを組んできた。この決定は偶然ではない。わが地域圏は観光と経済、さらには文化、教育と研究、そしてもちろんスポーツといった分野において日本との強い絆を共有している。特に私が議長に就任した2016年以来、その関係強化を望んできた」とコメントを出すなど日本へ熱視線を送る。

2023年にラグビーワールドカップ、2024年にパリ五輪を控えるフランスは、奇しくも日本と同じような流れで国際イベントを誘致している。フランスはこれらのイベントを、コロナ禍から国内の観光産業を立ち直らせるための大きな起爆剤にしたいと考えている。例えば、ラグビーワールドカップについて言うと、オクシタニー地域圏への経済効果は6300万ユーロ(約86億円)と予測され、直接または間接的な雇用が期待されている。

観光産業をコロナ禍から立ち直るための基幹産業の一つと位置付けているフランスは、2021年11月に、今後10年の観光産業の復興と変革にむけた「デスティネーション・フランス・プラン」を発表し、19億ユーロ(約2600億円)の予算を組んだ。観光立国としてのフランスの地位をより強固にし、さらにサスティナブルな旅行先としてもリーディングカントリーになることを目指すためだ。

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