フランスが「日本の旅行再開」に熱視線を送る事情 2023年のラグビーワールドカップを呼び水に
デスティネーション・フランス・プランにはいくつかの骨子があるが、そのなかでフランス観光開発機構が2022年4月から適用しているのが、宿泊施設の新たな格付け制度である。
ホテルの格付け制度に「SDGsの視点」
1から5の星の増減による格付けにおいて、従来の品質基準に加え、持続可能性と環境への配慮に対するルールが多く追加された。ホテル側は、星の数が増えるほど旅行者に部屋を高く売ることができるため、結果的に持続可能性と環境へ配慮した基準に従う施設が多くなる、という仕組みである。
ホテル選びの視点に環境への配慮を含めることは、ヨーロッパでも特に北欧の旅行者にとって関心が高いが、それと比べると日本を含むアジアからの旅行者はまだそこまでとはいえない。
しかし、フランス観光開発機構在日代表のフレデリック・マゼンク氏は「個人レベルでは興味が薄くても、会社として考えたときに重要になる」と言う。ツアーオペレーターを会社として何百人も海外へ派遣するときに、SDGsを考慮していることは、その会社のイメージに繋がるからだ。
さらに国内観光資産をブラッシュアップするためのもう一つの目玉が、今まで国内でライバル関係にあった地域間の連携である。
3月のランデブーアンフランスでは、「ヴァレ・ド・ラ・ガストロノミー(美食の渓谷)」という食をテーマとした広域プロモーションについて発表が行われた。同取り組みでは、フランス南部へ流れるソーヌ川およびロワール川流域を一つの文化圏として、そこで生み出された食や文化を、行政区域を越えて訴求していく。ブルゴーニュ・フランシュコンテ、オーヴェルニュ・ローヌアルプ、プロヴァンスの各地域圏と、その中に位置する主要都市であるディジョン、リヨン、マルセイユが手を取り合い、観光客の誘致に繋げていく。
マゼンク氏は「ヴァレ・ド・ラ・ガストロノミーという取り組みは、フランスで今までになかった珍しいパターン。普通だったら競合し合うことがある地域や町が一緒に取り組む。ラグビーワールドカップのプロモーションもそうだが、ポストコロナの今は全員でやらないと形にならない」と答える。
この協働傾向は国内だけではない。コロナ禍でヨーロッパ各国は他国と組むことも増えた。
「昨年12月にクリスマスをテーマとしてオンラインイベントをした。それに参加したヨーロッパの国が9カ国。コロナがなかったら各国独自でイベントをやっていたはず。コロナがあったからこそ、海外旅行って楽しいんだというメンタリティを取り戻す必要があった。私たちだけの問題ではない」(マゼンク氏)
今回のヴァレ・ド・ラ・ガストロノミーでは、名前通り「食」を中心に据えているが、これは観光において、食が観光のリピーターを獲得するカギとなるからだ。
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