フランスが「日本の旅行再開」に熱視線を送る事情 2023年のラグビーワールドカップを呼び水に

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「芸術、歴史、スポーツなどフランスへ旅行するきっかけは人それぞれだが、そのなかでもリピート率を高められるのが食。現地で食べた美味しいものを覚えていて、それが再度の訪問に繋がることは多い。1度の旅行で全ての楽しみを経験するのは不可能だが、食をきっかけとしてリピーターになり毎年3、4前後のアクティビティ体験をしてくれれば、10年で50くらいはこなせる。そういう凝り性の旅行者を増やしたいし、そういうお客さまは日本人には多い」(マゼンク氏)

コロナ前のやり方を踏襲しても成功しない

国際航空運送協会(IATA)が発表した最新の予測では、2024年には航空旅客数がコロナ前の2019年の水準を上回るとしている。この予測通りにいけば、あと2年で海外旅行需要は元に戻る計算だ。旅行者にとっての新しい関心事が生まれるなか、フランスはこの2年間のラグビーワールドカップとパリ五輪という2つの大会を経ることで、一気に旅行者を増やそうと目論む。

増加が見込まれる海外への旅行客を狙っているのは、送り出す側の日本の旅行会社も同じだ。ただ、まだ状況把握がコロナ禍より前の段階でとまっており、コロナ後に海外で進展している国際的なトレンドや、この数年間で変化した旅行客の嗜好の変化を捉えきれていない会社は多いという。

マゼンク氏は「コロナ前にうまく回っていたビジネスモデルをリスタート後に再び持ってこようとする声は日本の大手旅行会社に多い。ただ、安くすればなんでも売れると思っていると、この先はうまくいかないはずだ」と述べる。

オクシタニー地方観光局魅力向上担当ディレクターのファレ氏は「日本側と協力して商品開発を行い、地方色ある売れるものを作りたい」と答える。

フランス観光開発機構は、日本の水際措置が見直された6月のタイミングを見計らって、フランス各地から観光局スタッフを来日させて行うワークショップを3年ぶりに東京で対面開催することに決めた。これをターニンングポイントとして、フランスが日本からの旅行者に目を向け始めている。

守隨 亨延 ジャーナリスト

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しゅずい ゆきのぶ / Yukinobu Shuzui

愛知県出身、パリ在住。ロンドン大学クイーン・メアリー公共政策学修士修了。東京で雑誌記者、渡仏後はANNパリ支局勤務などを経て、現在は『地球の歩き方』フランス・パリ特派員。フランス外務省外国人記者証所持。主な取材分野は日仏比較文化と社会、観光。故郷の愛知県東海市では『聚楽園大仏を次の世代に伝える会』代表として関連文化財の保護活動に従事する。

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