懲戒解雇がどれだけ重い処分か知っていますか 規制厳しい日本でクビになるのはどういう時?

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訴訟になれば1年以上の月日が費やされます。「重責解雇」のため失業保険も減額され、就労の機会を得ることも難しくなるでしょう。さらに、会社が賠償金の支払いを拒否することも考えられます。敗訴をしても支払いに応じない会社は多いからです。

解雇規制の緩和をどう考えるか

経済界からは「解雇規制の緩和」という根強い要望があります。具体的には「1年分程度の基本給を支払うことで金銭解雇を認める」という方法が検討されています。これには慎重な意見が見られ、反発する声も目立ちます。

労働審判などを経て得られる解決金はどの程度でしょうか。労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査によると、労働審判における解決金額の平均値は229万7119円、中央値は110万円とされています。

日本の企業群のなかで中小企業の占める割合は99.7%。その中小企業にとって、退職してもらいたい人に1年分の給与を支払うことは大きな負担ですが、それでも現状では、労働裁判に訴えた人が、勝ち取れる解決金は年収の半分にも満たない金額だということも現実です。

とはいえ、日本には労働三権が存在し、日本国憲法第28条にその規定が設けられています。「解雇規制の緩和」には、これらの労働基本権との整合性が重要になってくることは明白であり、さらなる国民的な議論が必要になると思われます。

尾藤 克之 コラムニスト、作家、著述家

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びとう かつゆき / Katsuyuki Bito

東京都出身。議員秘書、大手コンサルティングファームで、経営・事業開発支援、組織人事問題に関する業務に従事、IT系上場企業などの役員を経て現職。現在は障害者支援団体のアスカ王国(橋本久美子会長/橋本龍太郎元首相夫人)を運営しライフワークとしている。NHK、民放のTV出演、協力多数。コラムニストとしても、「JBpress」朝日新聞「telling,」「オトナンサー」「アゴラ」「J-CASTニュース」で執筆中。『あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』(三笠書房)、『即効! 成果が上がる 文章の技術』(明日香出版社)など著書多数。埼玉大学大学院博士課程前期修了。経営学修士、経済学修士。

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