ホッケはなぜこんなに小さくなったのか? マグロ屋の三代目から見た日本の魚事情
誰にでもあるはずの「うまい魚の記憶」が、おおいに刺激されることだろう。さて、みなさんの舌は何を思い浮かべるだろうか。大人になって初めてカウンターで食べたトロ、母の作るサバの味噌煮、商店街の総菜屋のアジフライ……。
うまい魚の記憶が浮かべば浮かぶほど、うまい魚を味わう楽しみを失ってはならないという気持ちにさせられる。うまい魚を食卓に届けることこそが魚河岸の使命と心得る著者の魚に対する強い思いが伝わってくる。
養殖漁業の落とし穴や、マグロの初競りの本質などについて書かれているくだりもとても興味深い。この一冊で、日頃見慣れて聞き流していた魚に関するさまざまなニュースが、まったく違うものに見えてくるはずだ。
本来、長い海岸線を持ち、暖流と寒流が出会う条件のよい豊かな海に恵まれている日本の漁業が、衰退産業の烙印を押されているなど、おかしな話なのである。日本の海、日本の魚、日本の漁業の力にもっと自信をもつべきなのではないだろうか。
私たちはもっと現状を知る必要がある
和食が世界遺産だ、東京オリンピックでおもてなしだというが、さて。そのときどれほど日本の魚で賄えるのか。先日の総選挙でも、漁業振興と水産資源管理に関する抜本的な政策を掲げた党は皆無であった。明らかに日本の水産資源と漁業が危機に瀕しているのに、この問題に取り組もうとする政治家は限られている。
が、消費者である私たちがこの現状を知らなくては、争点にもなりようがない。まずはぜひ本書で魚のこと、日本の海のことを“知って”ほしい。政治や行政・漁業者の問題ばかりではなく、ひとりひとりの消費者に何が出来るのかも提案されている。
あまり時間はない。いま知ろうとしなければ、間に合わないかもしれない。手をこまねいているあいだに、魚はどんどん減っていく……。
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