ホッケはなぜこんなに小さくなったのか? マグロ屋の三代目から見た日本の魚事情

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実は日本以外の「漁業先進国」がみな取り入れて成果をあげている制度があるという。魚獲枠個別割当制度である。あらかじめ個々の漁業者や漁船に、それぞれが捕ってよい量を割り当ててしまうのである。

“解禁期間中であればいつ漁場に行ったってよいってことだ。逆に漁獲量が保障されているのだから、相場のよいときに捕りに行きゃあよいんだ。仲間と相談し、日をずらして漁に出かけ、水揚げを分散するもできるようになる。これで相場は安定し、品質は保たれ、さらに価値の高い魚になる。”

 

この方法でノルウェーやアイスランド、ニュージーランド、アメリカといった漁業国は資源量を増やすと同時に漁業生産金額も上がった。ノルウェーの漁師の手取りは2000万円にもおよぶというのだから驚きだ。

最近スーパーで見かけるサバは軒並みノルウェー産だが、じつはノルウェーではあまりサバを食べないそうだ。が、大きくて脂ののったサバなら日本人が高く買うというので、日本をターゲットに資源を育てている。当の日本のサバは早獲り競争で小さくやせたものが多くなり、それらは養殖のエサなどとして途上国などへ投げ売りされているという。

日本の消費者が払ったサバの代金でノルウェーの漁師は潤い、日本の漁師が一生懸命に働いて獲ったものが安い値段でエサになるというのか。こんなことがあってよいのだろうか。私は日本の漁師が獲ったまるまるとしたサバが食べたい!

こうした日本の水産資源の現状に関する水産庁の見解は、本書に書かれているのでぜひ読んでみてほしい。これをみなさんはどう思うだろうか。

著者の生田よしかつ氏は東京・築地市場のマグロ屋の三代目だ。本書はちゃきちゃきの江戸っ子らしい、明るくわかりやすい語り口調で書かれている。

築地の男ならではの話が面白い

上の画像をクリックすると、版元のサイトにジャンプします。

うまい魚の食い方や魚食文化を育んだ先人の知恵の数々も面白い。築地で食中毒が皆無なのはなぜか、日本の森林と刺身の意外な関係、マグロ一本釣りの極意(想像していたのとまるで違う!)等々、魚河岸35年の著者ならではの講釈は実に楽しく、ためになる。本書の主役「ホッケ」がこれほど好まれるようになるまでのいきさつ話も「ああ!そうだったのか!」と膝を打った。

それにしてもこの本は、読んでいるうちに猛烈に魚が食べたくなる。「春のアサリがぷっくり……」だの、赤が目にもあざやかな「マグロのネッチョリした味わい云々……」だのと、登場する魚介類それぞれに対して、著者の長年の経験と実感がこもった言葉が飛び出してくるからたまらない。

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