トヨタのイマイチだった車が抜群に変わった事情 好決算叩き出す「もっといいクルマづくり」の系譜
さらに生産の現場では仕入れ先と一体となったコスト低減活動や作り方の改善などにより、1円/1秒にこだわって原価を改善。つまり、「もっといいクルマ」を「アフォーダブル(手頃)な価格」で提供する努力をしているのだ。ちなみに同じコンパクトカーカテゴリでも、ダメなヴィッツと出来のいいヤリスを比べたら、ヤリスのほうが原価は安いという。その結果が、販売台数や為替はもちろんさまざまな外的要因にも左右されない収益構造につながっているのだ。
それはスポーツカーも例外ではない。GRスープラはBMW、GR86はスバルとの共同開発モデルだ。トヨタほどの規模であれば単独でスポーツカー開発を行う費用の捻出はたやすいはず。ただ、豊田社長はそれをしなかった。その理由は「社会情勢や景気に左右されないスポーツカービジネスを行うため」である。一度消滅させたスポーツカーの復活がいかに大変なことかを、身を持って経験してきたトヨタだからこそ、今までとは違ったアプローチが必要だったのだ。
「GRスープラ/GR86、どちらも“社長”としてトヨタの工数をスポーツカーに割ることができなかったが、共に『トヨタの味』に仕上がっているのは、素直にうれしい」
肝心のクルマの出来は?
一方、GRヤリスはトヨタ独自で開発されたモデルだ。「市場規模も小さいスポーツカーを継続させる」という意味ではGRスープラ/GR86と志は同じだが、GRヤリスには1999年にセリカGT-FOURが生産終了して以降、失っていたスポーツ4WD開発の技術/技能を取り戻すミッションがあり、そのためには自分たちの手を使ってトライする必要があったという。
「GRヤリスは0からトヨタだけの力でスポーツカーを作りたい『悔しさ』、トヨタのクルマづくりを変える『想い』、モータースポーツで勝つクルマを市販車として使ってもらう『逆転の発想』、エンジニアとトップレーサー、そして現場とワンチームでクルマを作る『挑戦』が込められています」
では、肝心のクルマの出来はどうなのか? 最近のトヨタのニューモデルに乗ると、決まった一言が「こりゃすごいわ!!」である。それを記事にすると読者から「お前はトヨタの回し者か?」と揶揄されるときもあるが、すべて本当のことだから仕方ない。
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