トヨタのイマイチだった車が抜群に変わった事情 好決算叩き出す「もっといいクルマづくり」の系譜

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トヨタが続けてきた「もっといいクルマづくり」とは?(写真:Toru Hanai/Bloomberg)

「決算書」は企業の成績表とも呼ばれ、誰もが企業の業績を客観的に判断できる資料だ。5月11日、トヨタは2022年3月期の決算を発表した。その実績はと言うと「増収増益」、つまり「売り上げ」と「利益」が共に増えている状態だ。では、どれくらい増えたのか?

●営業収益 31兆3795億円
(前年同期比 +4兆1649億円)
●営業利益 2兆9956億円
(前年同期比 +7979億円)
●税引前利益 3兆9905億円
(前年同期比 +1兆581億円)
●純利益 2兆8501億円
(前年同期比 +6048億円)

ハッキリ言って、驚異的である。2022年3月期はコロナ禍、資材・物流費の高騰、そして半導体不足と、自動車業界にとってハードルばかりだったが、なぜこのような業績が残せたのか?

その答えの1つに2009年から続けてきた「収益構造の変化」がある。

損益分岐ラインが大きく下がっている

ちなみにリーマンショック後の2009年3月期の販売台数は前年比15%減、業績はご存じのとおり大幅減益で戦後初の赤字……。その13年後、コロナ発生後の2021年3月期の販売台数は同じく前年比15%減、しかし業績はと言うと減益ながらも黒字は確保された。

この差は何なのか? それは損益分岐台数(収支が均衡する販売台数)の変化で、リーマンショックのときと比べると、200万台以上下がっている。つまり、10年以上かけて販売台数に頼らずに利益が確保できる体制を築き上げてきた……というわけだ。

この間、現場では何が起きていたのか? 豊田章男社長はこのように語っている。

「私が社長になって徹底したことは、『もっといいクルマをつくろうよ』というブレない軸を定め、『商品を軸とした経営』を行ったことです。現場に来て、創業家がクルマの話をするのが豊田家の伝統です。その現場とはどこなのか? それは『技術のある場所』『結論がなくてもファクトがある場所』です。自動車メーカーである限り、そこをトップが貪欲に拾いに行かないと進歩は生まれません」

それは、販売台数を追うがあまり、自動車メーカーとして大切な“何か”を失った反省でもあった。そこで、豊田社長はクルマとモノづくりを中心に捉え、台数や売り上げが決して先にならないような経営を掲げた。つまり、クルマ屋である以上はクルマで勝負……という、何とも単純明快な目標だ。

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