「業績上げたら年収1000万」の飲食店が敗北した訳 共感できる目標を掲げた星野リゾートとの違い

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

私自身は、外食産業はもっともっと収益性を高めて、社員の年収が上がっていくべきだと考えています。外食業界の所得水準の向上は、私が人生をかけてやりたいことの1つなのですが、成果主義人事で収益を出せば給料が上がるという、この利己目標をベースにしたこの仕組みは、残念ながら破綻してしまいました。

この企業では、売上予算はもちろんのこと、2大コストと呼ばれる原価率と人件費率の管理にも高い基準を設けていて、利益額をどのくらい出せるかでもらえる報酬が激しく変わる制度でした。

高い利益額実績を出せているときは店長の給料は上がり、会社も利益が残るので、何も悪いことはないのですが、業績が悪化したときは、あっという間に崩壊します。利益が減ったのに高い報酬を払い続けることはできません。

例えば前年1000万もらっていた人が600万円になると、税金の負担はとんでもないことになります。年収1000万円の税金は300万円くらいですから、600万円から300万円が引かれると、手取りが300万円程度になってしまうのです。手取り700万円あったものが半分以下へと激減してしまうというわけです。

成果主義人事とはそういうことです。

年収1000万円の店長が退職する

この場合、多くの店長はその会社を去ります。年収1000万円もらっているうちに、翌月から年収が落ちることが確定した段階で退職してしまうのです。なぜなら、転職する際、前職でもらっていた給与額が基準になるからです。

私が新卒で入社したコンサルティング会社も、成果主義人事制度を採用している組織でした。例えば、1000万円のコンサルティング受注をしたとすると、営業に関わったスタッフに4割の400万円、実際にコンサルティングをするスタッフに6割の600万円が「付加価値」として分配されます。営業メンバーが2人いた場合には、400万円を分配します。「あなたはメインで営業したから400万円のうちの300万円ね、「あなたはサブの営業だったから100万円ね」と話し合い、案件ごとの分配額が決まります。

1年間で全案件の分配額を合計すると、そのコンサルタントが会社の売上にいくら貢献したのかがわかる、という仕組みでした。この年間の付加価値額に特定の%をかけると年収が決まるという、極めてシンプルな成果主義人事です。

そういう成果主義の会社で、上司がどういう動機付けを部下にするかというと、「稼げるよ」の一択です。
・この仕事を頑張れば稼げるよ
・この仕事を覚えれば稼げるようになるよ
・お前も1000万プレイヤーになれるよ
・この仕事、付加価値が上がるからやらない?

これらはすべて、利己目標です。私たちは成果主義のなかで、利己的な動機づけしかできない状態になってしまうのです。

次ページカネの切れ目が縁の切れ目になる
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事